証拠金とは最大損失額をあらかじめ担保しておくためのルール

投稿者名:金森 雅人

オプション取引は証拠金取引なので、証拠金の考えは覚えておく必要があります。

買いポジションは証拠金が足りなくなる恐れはありませんが、売りポジションの場合は証拠金が足りなくなると追証が発生して決済されられる可能性があります。

必要証拠金とは、そのポジションが持つ最大損失額を計算して、このくらい用意しておけば計算上一発退場しないだろうという目安の資金を、証券会社が拘束するルールです。

よって、損失限定のクレジットスプレッドなどは、売りポジションが含まれていますが証拠金は一定額以上は増えません。

なぜなら損失限定だから、その最大損失額以上は要求されないからです。

この記事では必要証拠金の簡単なルールを解説します。

必要証拠金は計算上の最大損失額

オプションのポジションを保有していると、毎週証券会社よりSPAN証拠金の額が変動になるメールが来ます。

例えば先物ラージ1枚当たり66万円になりました、などといった内容です。

 

このSPAN証拠金による必要証拠金の額は、その時点の相場状況によります。

詳しくはオプション投資家養成塾第11章で扱っていますが、相場のプライススキャンレンジとボラティリティスキャンレンジによる変動と、相場の上昇・下落シナリオ16通りの中から一番最悪パターンを計算して採用されます。

と言っても難しいので、簡単に説明すると

「これから16通りの相場変動シナリオが用意されていて、その中で一番悪い条件が当てはまっても、資金が足りなくならないような額」=証拠金

というものです。

この16通りの相場変動シナリオやスキャンレンジは緻密に計算されており、おおむねどのような状況でもその範囲内に収まると考えられて採用されています。

もちろんたまに大暴落があるとその想定シナリオを超えて資金不足になるケースもありますが、そのケースはイレギュラーと考えます。

 

大暴落が来ても1日じゃ資金が足りなくならない量を、証拠金として拘束します。

よって、先物ラージ1枚の必要証拠金が66万円の場合は、660円の下落が一日で起こらないだろうと考えられるので、その程度の証拠金を要求されます。

もちろん暴落が来ない保証はありません。

暴落が来ても660円以下に収まるだろうと計算上考えられるので、必要証拠金が66万円だけで済んでいるだけです。

 

オプションも損失無限大の場合には証拠金が発生するが通常は先物より小さい

オプションも、売り玉の場合は損失が無限大なので、証拠金が発生します。

ただし、先物ラージ1枚よりもリスクが小さいため、66万円より少ない証拠金です。

 

こちらが先物ラージ1枚のリスクカーブ。

横軸が日経平均株価、縦軸が損益。

日経平均株価が下落すると損失が膨らむので、66万円の証拠金を要求されています。(2019年9月現在)

一方のプットオプションの売りのグラフ。

緑の線が今の損益グラフを示していて、青い線がSQ時の損益グラフです。

SQ時の損益グラフは先物ラージ1枚と同じ損失無限大の形をしていますが、現時点での緑の線は、なだらかになっています。

先物ラージ1枚の最大損失が66万円であるときは660円の下落が起きていることなので、その時のプットオプション1枚の最大損失は66万円より小さい値です。

損益グラフがなだらかになっているからです。

その最大損失額がいくらになるかを示すのが、必要証拠金です。

楽天証券のマーケットスピードで確認すると、567,100円でした。

このように、今最大考えられる下落が起きた時に、資金が足りる量を証拠金として拘束します。

非常に簡素化してお伝えしましたが、これが証拠金の仕組みです。

最大損失が限定されていれば、必要証拠金も最大損失額まで

そこで、オプション単体ではなく、スプレッドポジションを組んでいた場合はどうなるでしょうか。

例えば、プットのクレジットスプレッドを見てみましょう。

先ほどの事例に対して、P21000を買いました。

プットクレジットスプレッドなので、損失限定です。

P21375を150円で売り、P21000を39円で買ったので、受け取りは111円です。

最大利益は111円(1000倍するので実質110,000円)、最大損失は権利行使価格の幅375円-111円=264円(1000倍するので264,000円)です。

よって、このポジションの必要証拠金は264,000円です。

 

この時に例えばSPAN証拠金のパラメータが急騰して、66万円から一気に96万円に膨らんだらどうなるでしょうか。

通常のオプション売りポジションだと、必要資金が足りなくて追証になる可能性があります。

 

ただし、証拠金のルールは、変動があっても資金が足りなくならない量を証拠金として拘束しているにすぎませんので、このプットクレジットスプレッドの場合はいくらSPANのパラメータが大きくなっても、最大損失は264,000円で固定です。

よって、相場状況がどうなっても、このプットクレジットスプレッドは最大損失額までの証拠金しか拘束されません。

 

まとめ

売りと買いを組み合わせたスプレッドを組んでも、損失限定の場合は必要証拠金は最大損失額まで。

ただし、保有ポジションを合算してリスクを計算する「ネッティング」する証券会社に限ります。

SBI証券や楽天証券、松井証券ではネッティング対応しています。

その他の証券会社は、各証券会社に最新の情報を確認してみることをお勧めします。

500円上昇したときの証拠金をシミュレーターで簡易的に調べる方法もありますので併せてお読みください。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

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