プットのデビットスプレッドを組んでいて利益が出た場合には、どのようにしたら損益を固定できると思いますか?
インザマネーとなり反対売買もできなくなった時に役立つのがプットコールパリティです。
1) 下図のように、2019年5月7日原資産が21,950の時、P21875@455を1枚買、P21375@295を1枚売でデビットスプレッドを組んだとします。(最大利益340円、最大損失160円。)
その後、
2) 添付ファイル2のように、1ヶ月後の2019年6月7日思惑通り相場が下落したので決済しようと思ったが、板が無いのでプットコールパリティで損益を固定しようと考えました。
しかし、この時にP21875買に利益が出てるのでプットコールパリティで損益を固定するには、P21375売も同時に固定しないといけません。
P’21875を固定しただけでは利益を固定した事にならないからです。
デビットスプレッドの損益固定は、買い玉も売り玉も固定する必要があります。
P21375を固定しなければ、裸のプット売りポジションを持つということで、そのリスクを取るならP21875だけ固定してもいいですが、リスクが高すぎますよね。
プットコールパリティで固定するコールの支払いはコストと割り切る
2019年6月7日の引けで損益を固定した場合、各々以下の計算です。
・P21875買の固定 → プットの売を作って固定するので、C21875の売と先物買が必要です。
従って、C21875@1売 + mini20920買10枚でプットの売を合成すればP21875売りと同等のポジションとなります。
・P21375売の固定 → プットの買を作って固定するので、C21375の買と先物売が必要です。
従って、C21375@22買 + mini20920売10枚でプットの買を合成すればC21375買いと同等のポジションとなります。
この時、P21875-20920=955、P21375-20920=-455なので500円幅の利益を固定したいのですが、C21375を22円で買い、C21875を1円で売っているので21円のコストが掛かる事になります。
この21円はコストとして見なければならないと考える方がいますが、これはコストというよりは、損益固定するために相場からの損益変動を受けないようにする必須の実費です。
利益が出た時に任意のタイミングで合成ポジションを作って損益を固定出来るプットコールパリティって便利だなと思うかもしれませんが、組成するのに実費が伴います。
その21円をコストとして支払うのか、SQまで保有して21円のコストを支払わずに済むかの選択です。
パリティでコストを減らす方法はない
この支出をゼロにする方法はありません。
これはコストのように見えますが、厳密には現在のP21875とP21375が持っている時間価値の分と等価です。
P21875には22円の時間価値が残っているので、今決済すると原資産価格と権利行使価格の差に加えて、22円余計に支払う必要があります。
これを無くしたければSQ決済する以外にないです。
反対にP21375は1円の時間価値があり、これを今受け取れています。この時間価値がSQには0になります。
このように、SQ前に反対売買するには今の時間価値を支払ったり受け取ったりするので、これはコストではなくオプションが持っている特性と考えたほうが分かりやすいかと思います。
日経225ミニは買い玉と売り玉で相殺されるので組む必要はない
また、前述のポジションを組んで双方を固定した場合、P21875買を固定する為に合成するプット売ではminiを20920で10枚買います。
ここでP21375売を固定する為に合成するプット買ではminiを20920で10枚売る事になります。
よって、miniの買と売は相殺し合うので建玉が不要で、P21875買とP21375売を同時に固定する場合はC21875を売り、C21375を買うだけで良いです。
そうです。ミニは相殺されるので、
プットデビットスプレッドの損益固定は、同じ権利行使価格のコール側でコールデビットスプレッドを組めば、損益固定できます。
もしmini10枚ずつの売買はせず、コールの売買だけしてSQを迎えた場合、それでもプットコールパリティが成立して想定通りの損益(955-455-21-160=319円)を得る事が出来ます。
プットコールパリティの計算式の事例
条件:・原資産21200円
・ITMプット権利行使価格21250円@320円
・OTMコール権利行使価格21250円@280円
ITMのオプションプレミアムが妥当かどうかを判定するために、OTMのオプションを使用して、判定していると思います(21250円-21200円+280円=330円。
よって330円が適正プレミアム)。
これはOTMのオプションプレミアムは常に適正という考え方、つまり、OTMのプレミアムが適正価格かどうかは判定はしていません。
よってプットコールパリティでは判断できません。
もしやるとしたら、IVの値をスマイルカーブ的にプロットして、そのオプションだけイレギュラーなIVになっているかどうかを判別することくらいでしょうか。
流動性がある市場なら、プロも参入している日経225オプション市場なのでOTMがイレギュラーになっていることは考えにくいです。
(夜間や期先の限月のものは、約定値が過去のものだったりする可能性はあります)
ITMのオプションを買う場合は少ない
ITMのプットオプションを買うとき、前述の質問のように、ITMのプットオプションのプレミアムが適正かどうか、一々確認されて、その価格になるまで、ポジションは新規建てしないということをされているのか質問をいただきますが、ITMのプットオプションは、あまり買いません。
なお、上記程度のITMのものであれば、だいたい買い気配と売り気配があるので、ほぼ適正な価格であることが多いです。
日経平均株価の水準にもよりますが、500円とか1000円とかITMになっていると、価格帯がずれていることもあるかと思いますが、200~300円程度なら、ほとんどATMと変わらないと思いますよ。
ITMの流動性は、ATMに近ければ流動性があり、離れれば離れるほど流動性が少なくなります。
ITMのオプションが一律で一気に流動性が無いわけではありませんよ。
プットコールパリティの他に約定のさせやすさも重要
・プットデビットスプレッドを組成しようと考えたとします。
・原資産が21200円。
・権利行使価格21250円プット買い@320円、権利行使価格21125円プット売り@265円。
・プット買い@320円で約定。
少しでもプット売りを有利な価格で約定させようと思い、265円以上に買い気配が来るのを待っていましたが、結局265円以上に買い気配が来ることなく、ずるずる下落。
デビットスプレッドのスプレッド(最大損失)が拡大したため、やむなく、プット買いを損切りし(@280円で△40円の損失)、デビットスプレッドのポジションを組成できませんでした。
こういったことを回避するには、養成塾講座11章後編p14以降で説明があったように、プット買いのポジションは中値で待機し、約定したら、プット売りのポジションは板にぶつけるしかないのでしょうか。
そうですね。
一番妥当な発注方法は、そのように片方約定したらもう片方をぶつける、が一番やりやすいです。
初心者は買いからが原則なのでそのやり方でいいですが、慣れてきたら売りと買いを同じように待って、どちらかが約定したら反対をぶつけるというやり方もできます。
ただ、少しでも有利な価格で約定させようと待つなら、絶対に買いから約定させて待つほうが良いです。
今回はうまくいかなかったようですが、繰り返せば有利な時でも約定して、半分の確率で起きればプラスマイナスゼロです。
そう思って毎回有利な条件を探すか、諦めて今の価格で約定させるかですね。
オプション取引は瞬時の優位性を狙うよりも、スプレッド取引でオプション自体の値動きで利益を出すほうが個人投資家向けだと思いますので、あまり有利なタイミングを狙うと自滅する可能性はありますので注意を払うと良いと思います。
まとめ
この時のコールデビットの支払いを嫌うなら、これは時間価値なので満期までやり過ごせば時間価値がなくなりプットデビットの満額の利益になります。
その代わり、相場が上昇したら満額の利益を得られないので、その前にパリティで固定することの代償という感じですね。
プットコールパリティやITMの計算については頻出しますのでぜひ覚えておきましょう。
併せてプットコールパリティをわずか1分で頭に描く方法の記事を読むと理解が深まるかと思います。