オプション取引の学習を行うと、オプション取引にはいろいろな戦略が存在することがわかってきます。
今回はその中でも比較的初心者の方でも、すぐに始めることができる取引条件を全て満たしたオプション取引の戦略をご紹介します。
【目次】
1.初心者がまずは抑えておきたい、オプション取引を行うための5つの条件とその解説
2.5つの事例から学習するオプション取引の賢い戦略
3.まとめ
1.まずは抑えておきたい、オプション取引を行うための5つの条件とその解説
オプション取引を行う上で初心者の方がオプション取引をする際に満たしたい取引条件の5つをしっかり抑えておく必要があります。
- ①損失限定
- ②損失が出た場合に次もエントリーする気になる損失額;リスク許容度によるがおおむねリスクにさらす資産の2~5%以内
- ③流動性があること=約定させやすいこと
- ④保有するポジションの数が多すぎないこと
- ⑤瞬発力を必要とするものではないこと(例えば、瞬間的な価格の歪みを利益に変える等は困難です)
このオプション取引を成立させるための5つの取引条件を1つずつ解説していきますので、初めてオプション取引を始められる方も学習することができるように当ページは作成されています。
1.損失限定であること
オプションの売りは、相場の大変動やギャップにおいて、予想外の大きな損失となる可能性がある大変ハイリスクな取引です。
オプション売り戦略は勝率の高さから人気があることは事実ですが、初心者には絶対おすすめしません。
オプション売り戦略は勝率の高さから人気があることは事実ですが、初心者の方にはオプション取引を売りだけで行うことは絶対におすすめしません。
特に日経225オプションは証拠金取引で、自己資金に対してレバレッジを掛けることができて、強制ロスカットタイプではなく追加証拠金を要求されるタイプなので、自己資金を超える損失を被る危険性があります。
よってオプション買い戦略を推奨しますが、常に掛け続けた場合にはオプション買い戦略は勝率が低くなります。
勝率の低さについては、この記事で紹介するような戦略を用いてエントリータイミングを計ることで勝率の低さをカバーすることを考えて、まずは損失限定のオプション買い戦略から学習を始めていくのがおすすめです。
2.損失が出た場合に次もエントリーする気になる損失額
資金管理も重要な要素です。
リスク許容度によりますが、リスクにさらす資産の2%~5%以内、例えば100万円をリスクにさらすのであれば2万円~5万円が1回の損失の目安です。
慣れてくればもっとリスクにさらす量は多くなるでしょうし、オプション売り戦略を絡めたスプレッド売買を検討し始めると思いますので目安を守ることが無くなるかもしれませんが、最初はしっかりと損失の目安を守って取引して練習を積むことが何よりも大切です。
リスクを取り始めるのはオプション取引に慣れてきて、オプションが難しいと感じなくなってからでも遅くはないでしょう。
1の損失限定に加えて、損失額にも注意を払ってオプション取引を始めることを肝に銘じてオプション取引の学習を行ってください。
3.流動性があること
オプション取引では、流動性が重要です。
流動性の喪失は投資の成否を分ける重要な要素です。
株やFXと違って、オプションの銘柄は多いです。
日経平均株価の125円刻みごとにオプションが存在しますので、投資対象の量が多くなり権利行使価格によって流動性にばらつきが生じます。
オプション料が安いほど流動性は高く、特に100円未満のオプションの場合は呼び値が1円刻みなので取引しやすいですが、現在の日経平均株価と同じ権利行使価格のオプションの場合は流動性に注意が必要です。
特に初心者を狙って、オプションの流動性の低下を利用したずる賢い戦略を採用しているベテラン投資家もいます。
オプション流動性低下時に気を付けなければいけない点はオプション取引で心の隙を「ドーーン」と突く手口の暴露を参考に学習してみてください。
4.保有するポジションの数が多すぎないこと
初心者がオプションを手掛ける場合には、1枚か2枚の取引に留めておいた方が良いでしょう。
オプション戦略の1つであるコンドルやバタフライは、1つの戦略でポジションを4つ取る必要があるため初心者にはポジション組成が難しい点があります。
オプションが4ポジションあっても慣れれば発注も容易になるほど熟練すれば問題ありません。
ポジションを4つ取った動画については、コンドルの4ポジションを松井証券のツールで実際に建てた事例を見るとどのように組成したのかを知ることができます。
脱初心者としてポジションを複数建てられるようになるまでは、発注の練習も兼ねてオプションの枚数は抑えて採用する戦略も最低限にしておきましょう。
5.瞬発力を必要とするものではないこと
相場の急変に対応する戦略は、瞬発力が必要となります。
特にデイトレードのようにその場その場で臨機応変に戦略を変えたりポジションを組みかえるような戦略は、4ポジションのオプションを複数枚建てる必要があるため練習が必要であり、さらに瞬発力も必要となります。
そのような急変タイミングを狙う戦略よりも、数日の間に戦略を手掛けられるタイミングがある戦略を採用するほうが初心者の学習段階には合っているでしょう。
2.5つの事例から見るオプション取引の賢い戦略
この5つの条件を満たす戦略について、プットオプション買いに加えてオプションと密接に関係する日経平均VI先物を取引する方法もあります。
ここでは5つ事例を紹介しながら具体的な戦略についてご紹介していきます。
抑えておきたいオプション取引5つの事例
- 上昇相場の終わり天井示唆プットオプション単体買い
- コールクレジットスプレッド
- 100円以下のオプション買い+mini(ポジティブガンマ)
- 日経VI先物買い(VI指数が16以下で手掛ける)
- 日経VI16~17以下のときmini1枚買い+日経VI先物数枚買い
それではこちらを1つずつ詳しく解説していきます。
①上昇相場の終わり天井示唆プットオプション単体買い
まずは、テクニカル分析など自身の相場観を利用した、上昇相場が終わりそうな局面で天井を示唆する形となったときに逆張り的にプットオプションを買う戦略です。
この戦略については、オプション取引の学習を始めるなら、おススメはプット買い戦略からを参考にしてください。
②コールクレジットスプレッド
天井付近に近づき、IVも相当程度低くなっている場面で、それほど上昇しないだろうが天井付近でうろうろもするかもしれない、と考えられる場合には、損失限定のポジションでとしてコールクレジットスプレッドを採用すると安心感・組成のし易さがあります。
コールクレジットスプレッドは、コールの売りを、買いオプションで守る作戦です。安い方の権利行使価格のコールオプションを売って、権利行使価格のコールオプションを買います。
例えばC19000を売ってC19250円を買うようなポジションのことを指します。
コールオプションは、権利行使価格が日経平均株価と一緒の価格を示すアットザマネーから、ややアウトオブザマネー(権利行使価格が日経平均株価よりも高い銘柄)の銘柄のほうがインプライドボラティリティが低い傾向にあるので、スマイルカーブの形から少しだけ有利なポジションになっています。
スマイルカーブとは
原資産は同じ日経平均であるにも関わらず、オプションは権利行使価格ごとに異なるインプライドボラティリティ(IV)の値をとります。しかしながら、無秩序な値をとるわけではなく、横軸を権利行使価格、縦軸をIVの値として、プロットするときれいなカーブを描きます。このカーブが微笑んだ口の形に似ているため、スマイルカーブと呼ばれています。
スマイルカーブを見ると、ほとんどが上記のようにプット側が高くなり、コール側はフラットに近いカーブを描きます。
プット側が高い理由は、暴騰より、暴落が怖いと言う市場参加者の気持ちが表れていると言われています。
なぜこのような形になるかという問いに絶対の正解は無いので、いろんな考えがあるでしょう。
理由として考えられるのは、日経平均は上昇より下落の方が起きやすいと市場参加者が考えているからであったり、下落の方がスピードが早いため下落したら困ると思っていて先回りして買っている人がいるから、プットが買われIVが高くなると考えられます。
このスマイルカーブでコール側のIVを見ると、アットザマネーからアウトオブザマネーにかけては「権利行使価格の安い方がIVが高く、権利行使価格の高い方がIVが安い」状態にあります。
この権利行使価格を用いてコールクレジットスプレッドを手掛けることで、スマイルカーブ上の優位性を狙う作戦です。
このコールクレジットスプレッドは、相場が大きく下落した後、大底を示唆した際に採用することも効果的です。
③100円以下のオプション買い+mini(ポジティブガンマ)
100円以下と安くなっているアウトオブザマネーを買って、miniでデルタヘッジするというのも建てやすい戦略と言えます。
なぜなら、呼び値は100円以下であれば1円刻みなので、約定させやすい特徴があり初心者でも建てやすいポジションだからです。
さらにはデルタが0.1や0.2程度のアウトオブザマネーのオプションを選択してデルタヘッジをすれば、ガンマが小さいため相場の変動に対してデルタの動きが小さく扱いやすい戦略と言えます。
④日経VI先物買い(VI指数が16以下で手掛ける)
上記の3つの戦略は、権利行使価格の選択により損失額をある程度コントロールする戦略です。
扱う銘柄数(枚数)が少なく、比較的流動性のあるものを利用すれば、誰でも実践可能な戦略という意味で手掛けやすいと思われます。
オプションを使う戦略とは別に、日経平均VI先物を使う方法もあります。
日経平均VI先物については、若干流動性が心配ですが今はマーケットメーカーもついていますので、平時であれば手掛けることは可能でしょう。
この動画では、日経平均VI先物が16ポイント以下になったときにエントリーしていたらどのような結果が出ていたかを示しています。
日経平均VI先物は、先物でありながら損失限定ポジションなので初心者にもお勧めの商品です。
⑤日経VI16~17以下のときmini1枚買い+日経VI先物数枚買い
また、日経VI先物の特徴を活かした戦略としては日経先物miniを1枚買って日経平均VI先物を買う戦略もあります。
こちらはオプションではなく日経VI先物のある程度の特徴を知る必要がありますが、オプションの学習において勉強しがいのある戦略だと思います。
3.まとめ
初心者がオプション取引をする際に満たしたい取引条件の5つとは
- ①損失限定
- ②損失が出た場合に次もエントリーする気になる損失額;リスク許容度によるがおおむねリスクにさらす資産の2~5%以内
- ③流動性があること=約定させやすいこと
- ④保有するポジションの数が多すぎないこと
- ⑤瞬発力を必要とするものではないこと(例えば、瞬間的な価格の歪みを利益に変える等は困難です)
この5つであり、5つを満足して初心者が手掛けやすい戦略としては
上昇相場の終わり天井示唆プットオプション単体買い
コールクレジットスプレッド
100円以下のオプション買い+mini(ポジティブガンマ)
日経VI先物買い(VI指数が16以下で手掛ける)
日経VI16~17以下のときmini1枚買い+日経VI先物数枚買い
などが手掛けやすいと言えるでしょう。
しかし手掛けやすさと利益が出るかは別物なので、シンプルな反面、裏返しとして相場観を多少入れないと利益になりづらい戦略もありますのでご注意ください。
この記事を読まれた方は、日経225オプション取引に使う証券会社を選ぶ9つの基準も併せてお読みいただくとオプション取引を始める準備ができるでしょう。