あなたがもしこれからオプションを学ぶのであれば、最初に「カバードコール」を学ぶのが良いでしょう。
「カバードコール」とは、現物株を保有して、その現物株のコールオプションのことを指します。
そのコールオプションを売ります。
オプション売りというと難易度が高い戦略だと思われがちですが、全くそのようなことはありません。
実際に米国の証券会社では、カバードコールが最もリスクの低い、低難易度の戦略として紹介されています。
例)Charles Schwab証券会社
例)e-trade証券会社
例)投資情報サイト Investorplace
なぜこれらの証券会社や情報サイトでLevel1(最も低いレベル)にカテゴリされているかを解説します。
カバードコールを売ってもリスクが増えない
通常は、何かしらの株式や商品を保有すると、リスクが高まります。
株式投資のリスクとは、下落リスクや上昇リスクなどをひっくるめて「将来の価格変動のブレ」を指します。
ここで言うリスクとはWikipediaで定義されている文章を引用すると
リスク (英: risk)とは、将来のいずれかの時において何か悪い事象が起こる可能性をいう。
この概念をベースとして、金融学や工学、あるいはリスクマネジメントの理論の中で派生的にバリエーションのある定義づけがなされている。
ファイナンスの分野においては、「悪い事象が起こる可能性」だけではなく「良い事象が起こる可能性」もリスクに含まれるという「提唱」(Aswath Damodaran (2003))もなされている。
このように定義されています。
オプション売りを追加したポートフォリオでは危険性が増すと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は単体の売りポジションではなく、保有株を持っていることが前提です。
保有株に対して、カバードコールを売れば、リスクは高まることはありません。
良いほうも悪いほうも、ブレが大きいとそれだけリスクが高いと言われます。
なぜカバードコール売りはリスクが増えないのか?
まず、株のリスクは引き受けていることが前提です。
株式投資のリスクは
・持っている株が値上がりすれば上昇益をもらえます。
・逆に持っている株が値下がりすれば、含み損です。
極論すればこの2つが株式投資のリスクです。
では、カバードコールをするとどうなるのか?
現物株を持ったまま株オプションを売ると
1)持っている株が思ったより値上がりしたら、株の上昇益は無くオプション料をゲット
2)持っている株がそこそこ値上がりしたら、株の利益+オプション料をゲット
3)持っている株がほとんど値動きが無ければ、オプション料をゲット。
4)持っている株が値下がりしたら、含み損だけどオプション料はゲット。
のように、どの選択肢になってもカバードコールで売ったオプションの金額が、自分のポケットに入ってきます。
悔しいのは「株が思ったより値上がりしたら」の1点です。
これは予想よりも株価が上昇し、大勝ちし損ねた、というだけです。
でも、次に値上がりする銘柄なんて、分かりますか?
分からないからこそ、そこそこの上昇益をもらってコールオプションの売りで入る利益をもらえばいいかと思えるのではないでしょうか。
もし株価の上昇が分かっていたら、単純に株を買ってホールドしているのが最も安全ですよね。
こうやって自分のリスク許容度に対して調整できるのがオプションの特徴です。
上昇益を諦めるということは、いつ起きるかわからない急騰をじっくり待つのをやめるのでリスクが下がるということです。
通常の保有株だけの損益グラフ
例えばコカ・コーラ社の株を見てみましょう。
現在のチャートは下記となっています。
今の株価が47.24ドルなので、100株買った場合には、コカコーラ株の最大損失額は、4,724ドルだけに限定されています。
株価が0以下にはならないからです。
そのような意味においては損失限定と言えます。
なお、上昇は青天井でどこまでも行く可能性があるので、利益は無限大の可能性があります。
カバードコールの効果
このコカコーラ株に対して、50ドルまでいかないだろうという相場観を持ったとします。
その時にカバードコールをします。
コカコーラ社のコールオプションを売るのです。
そうすると、カバードコールをする前の株価の利益は青天井でしたが、カバードコールをすることで有限の利益しか狙えなくなりました。
その代わりに、コールオプションを売ったことでオプション料が手に入るので、少しお得に指値をしている状態と言えるかもしれません。
もし株価が上昇していけば、現在値47.24から50ドルまでの差額の2.76ドル×100株を手にすることが出来て、コールオプションが権利行使されれば株を渡してポジションが清算されます。
一方で株価が50ドルまで上がらずに50ドル以下でとどまった場合は、株を手放す必要は無くコールオプションのオプション料だけを手にすることが出来ます。
カバードコールでなぜリスクが減るのか
カバードコールは、現物株とコールオプションの売りを両方保有することによって、下図のように無限の利益ではなく値上がり益をあらかじめ受け取れる戦略です。
もともと、コカコーラ株は4,724ドルが最大損失、利益は無限大という損益予想でしたが、オプションを入れることで、最大損失は4,724ドルからオプション料を引いた額となります。
そして最大利益は276ドルに限定されますが、コールオプションを売ったことによるプレミアム料が手元に残ります。
コールオプションを追加したことにより、最大損失と最大利益ともに予想できる範囲に収まり、かつ損益のブレが小さくなっています。
リスクの定義では将来のいずれかの時において何か悪い事象が起こる可能性だと、カバードコールを実施した場合には明らかに最大損失が小さくなり、最大利益も有限になったため、リスクが低下したと表現できます。
- 最大損失:-4,724ドル
- 最大利益:青天井
↓
- 最大損失:-4,724ドル+コールオプションを売ったことによるプレミアム料
- 最大利益:276ドル+コールオプションを売ったことによるプレミアム料
このようにブレが小さくなっていて、かつ投資家が一番気になる「最大損失」までもが低リスクに変わっています。
このことから、アメリカの証券会社ではカバードコールが最もレベルの低い戦略として取り上げられています。
オプション単体の買い戦略よりもレベルが低いのがカバードコールです。
Charles Schwab証券会社やE-trade証券では、オプション単体の買いはカバードコールよりも上のレベルにカウントされています。
このことからもいかにカバードコールが低リスクなのかを示している証拠です。
カバードコールに関してオプショントレード普及協会で動画を配信していますのでぜひこちらもご覧ください。
まとめ
あなたがもしこれからオプションを学ぶのであれば、最初に「カバードコール」を学ぶのがお勧めです。
米国の証券会社では、カバードコールが最もリスクの低い低難易度の戦略として紹介されているのは、コールオプションを追加したことにより、最大損失と最大利益ともに予想できる範囲に収まり、かつ損益のブレが小さくなるからです。
ブレが小さくなっていて、かつ投資家が一番気になる「最大損失」までもが低リスクに変わっていることから、アメリカの証券会社ではカバードコールが最もレベルの低い戦略として取り上げられています。
その理由はアメリカ株オプションがカバードコールを実践するのに向いている理由とはで解説しています。