あなたは、オプション取引は全ての戦略においてギリシャ文字による綿密なリスク管理を必要とすると思っていませんか?
特に売りポジションは、初心者は絶対やってはいけない投資行為だと思い込んでいませんでしょうか。
実は途中の値動きをチェックせずにオプションの満期まで保有し続けても、株価の下落以外に全くリスクが増えないオプション売りの方法があります。
それは現物株を保有してコールを売る、カバードコールと呼ばれています。
カバードコールは売り戦略なのに、単純なオプション買い戦略より難易度レベルが低い取引で、初心者が手掛けるのにとても適しています。
しかも満期まで途中の値動きを気にする必要が無いので、ギリシャ文字による管理さえ不要です。
株オプションなら満期まで保有すること前提なので、株価が値上がりしても、横ばいでも、値下がりしてもどうすればいいかあらかじめわかっているから安全性が高いのです。
この記事を読むことで、初心者でも安全にオプションを売るカバードコール戦略が分かります。
【目次】
1.株価チャートとオプションの損益グラフの違い
2.カバードコールが満期前の損益を気にする必要がない理由
3.カバードコールは現物株+コール売りポジション
4.アメリカで流動性が高い、株オプションの事例
5.KO株のオプションチェーン
6.まとめ
1.株価チャートとオプションの損益グラフの違い
株
通常の株価は、横軸を時間、縦軸を株価にしたチャートを用います。
株やFXでは、変動要素が価格だけなので時間を横軸にしたチャートでその銘柄の過去をローソク足で判断しています。
オプション
一方、オプションの損益グラフは、時間は表示しません。
1日ずつ新しい損益グラフに更新されていくイメージで、本で例えれば次のページに移ったようなものです。
過去を振り返ることはできますが、毎日更新されていくのでそれほど過去の数値は重要ではありません。
なぜ毎日損益グラフが変わるかというと、満期前のオプションは株価と損益が一定ではなく、原資産の動きや時間などの様々な要因によって損益が異なる影響が大きいからです。
オプションの損益グラフは株やFXと異なり、時間が経過すると株価と損益の関係に変化があるので、2軸で表すときに時間を犠牲にして株価と損益の関係を損益グラフ化します。
よってオプションの損益を示すときは、時間軸が無い下図のような2軸で表されるのが一般的です。
時間を進めると変化していく損益グラフ
例えばコール売りの姿を損益グラフで示すと、下図のようなカーブを描きます。
このポジションを売った瞬間は縦軸株価が23,020円で、縦軸損益が0円を示しています。
保有直後
今すぐ1,000円の暴落が来ると、緑の線沿いに損益が変わってきますので1,000円暴落したら緑の線に沿って含み益が増えていき、およそ35万円の含み益がコール売りで得られます。
オプションの損益グラフの特徴は、今の瞬間を切り取った姿であり、翌日にはこのカーブが変化する点です。
10日後
例えば10日経過した場合の姿を表示することができます。
これは未来の株価を予想するのではなく、あくまで損益グラフが変化することを視覚化できるのみです。
下図が10日経過後のオプション価格の損益グラフです。
黄色は、この日に日経平均株価がいくらだったらオプションの損益がどうなるのか分かります。
20日経過後
次に20日経過後の予想損益グラフです。
黄色い線が膨らんできたように姿が変わっています。
緑の線はエントリー時なので、黄色の線が緑に戻ることはありません。
満期日
そして最後の満期日になると、下図の青い線の通りの損益が出ます。
エントリー時は緑の線の上を動くオプションが、時間が経つと徐々に姿を変えて最終的に青い線の値動きとなります。
このように、時間とともに損益グラフが変化していくので、株やFXのようなローソク足によるチャートは描けません。
パラパラ漫画のようにある時間を切り取って日経平均株価とオプションの損益を示す損益グラフがあるだけです。
また、黄色い線の未来予想はリスクパラメータが今後も一定と想定すればこの線に従います。
でもリスクパラメータは変化していくので、絶対に黄色い線になるとは限りません。
いま正確に分かるのが、エントリーの姿と満期の姿
この中の最後の青い線は、満期に到達する姿です。
オプションが投資の期間中ではどんな価格になるか予想はできませんが、満期日の損益グラフは必ず正確に出すことができます。
上図が示しているのは、日経平均株価が23,125円で終わればコール売りのプレミアムが利益として得られることを示しています。
ですが日経平均株価が横軸のゼロライン、約23,625円以上になると損失が出始めます。
このような底が見えない損失のことを、損失無限大と呼んで危険なポジションだと考えなければいけません。
経験則でいきなり10,000円や20,000円日経平均株価が上昇することはほとんどないのですが、理論上は損失が有限で止まっていないので「損失無限大」です。
このようにオプションにはローソク足のチャートを当てはめるより、日々損益グラフが変化していくのをパラパラ漫画を見るように、時間軸を頭でイメージしながらグラフを見ていく必要があります。
この中で、変化しないのが緑のエントリー時の姿と、青い線で示されている満期の姿です。
満期の株価が決まればオプションの価値は必ず決まりますのでグラフ化できます。
本の見開きが緑のエントリーの姿、途中はどうなるか分からないけどパラパラめくった最後に待っているのが満期の青い姿です。
満期より前は、どのようになるか決まっておらず曲線で描かれますが、満期の姿は必ず決まっていて角張ったグラフを表示しています。
ページをめくるのが時間経過で、オプションの損益グラフとはこのように時間軸が含まれていないのでパラパラめくる=時を動かす=何日後にどうなるか損益グラフをめくる ことをしています。
2.カバードコールが満期前の損益を気にする必要がない理由
カバードコールが満期前の損益を気にする必要がない理由は、途中でポジションを入れ替えたりしないで満期を通過させるからです。
満期まで保有することが前提であれば、青い線を調べればどのくらい損益が出るのか分かります。
このように、22,250円を超えた後は奈落の底へまっしぐらです。
この意味は、22,250円以下であれば、いくら下がっても一定のプレミアムは確保できるけど、およそ23,000円を超えたあたりから損益はマイナス方向に向かっています。
このコールを売り、先物を1枚買えば、カバードコールの完成です。
原資産1枚につき、コールは1枚売ります。
上記の図は先物の損益グラフを出しているのお判りでしょうか。
いくら時間を推移させても、青い線が移動することはありません。
3.カバードコールは現物株+コール売りポジション
今回の題材のカバードコールを損益グラフで示すとこうなります。
細い青い線で右上に出ている戦が日経平均先物の損益、もう一つの青い線で22,000円より右下がりになっているのがオプションの満期の損益。
この2つを足したのが太い線の合成ポジションであり、今期のカバードコールの損益図です。
4.アメリカで流動性が高い、株オプションの事例
KO(コカコーラ社)株価をチェックすると現在49ドル、この先9月にかけてどのように動くかわかりません。
この株をまず100株買います。株オプションは1枚100株分に相当するからです。
次にコカコーラのコールオプションを1枚売ることで、カバードコールの完成です。
下図の太い青線のように、ある一定価格までは右肩上がりで、途中から水平に変わっています。
この損益グラフは満期の形を示しています。
現物株を買ってカバードコールすれば、そのあとは満期まで何もしなてもこの上図の青い線のどこかに必ず到達しています。
よって期中でギリシャ文字を気にしたり、リスクカーブによる含み損益を考える必要はありません。
その理由は、株オプションは満期に株に変わる仕組であることをはじめから分かっていて、想定外のことが起きても慌てて反対売買する必要が無いからです。
もちろん期中にリスクカーブを見てもいいですが、最終の損益はあらかじめ決まっていて上図の損益グラフの太い青線にしか着地しません。
株価の動きとコールの権利行使
一つずつシーンに分けて株オプションがどうなるかを解説します。
1)株価が上昇した場合は、株は利益が出ていますがコールは損失です。
カバードコールであれば、コールの損失は株の利益と同額になるので、ある程度権行使価格を遠めに設定すればキャピタルゲインを狙いつつオプション売りのプレミアムを得られます。
2)株価が49ドルで一定だった場合は株からは損益が発生せず、コールを売った時に受け取るプレミアム分が利益として残ります。
3)もし株価がその価格を下回っていればコールは消滅するので、再度カバードコールをして、同じようにコールを売ってプレミアムを手にすることが出来ます。
1)と2)は満期が来てオプションが現受けしていたら取引は終了です。
株もオプションも清算されます。
3)のように権利行使されずにオプションが消滅したら、コールを売るカバードコールを行い再度利益を狙います。
5.KO株のオプションチェーン
2020年9月のオプション銘柄です。
例えばカバードコールの満期を9月にしたければ、銘柄を選んでコールを売るだけです。
例えばC50を売ってみると、現在のオプション価格は1.64ドルで、100倍した164ドルがコール売りで得られるプレミアムです。
コカコーラ株100株を取得するためには49ドル×100株=約49万円が必要で、3か月で164ドルのプレミアムが受け取りになるカバードコールをしました。
6.まとめ
カバードコールは満期まで保有し続けることが前提なので、期中のリスクカーブによる管理は不要です。理由は株価の下落以外に全くリスクが増えないオプション売り方法だからです。
カバードコールは売り戦略なのに、単純なオプション買い戦略より難易度レベルが低い取引で、初心者が手掛けるのにとても適しています。
カバードコールはアメリカの証券会社や投資情報サイトでも軒並みlevelが低く設定されています。
アメリカ株オプションがカバードコールを実践するのに向いている理由とはでも解説しています。