金オプションのアットザマネーのデルタは0.05相当になります。
これは日経225オプションが1枚あたり1000倍となっているのに対し、金オプション1枚あたりの乗数が100倍となっているためです。
この記事ではデルタが0.05であることの注意点と、デルタヘッジをしないでも良い金オプションの活用法について解説します。
デルタとは
デルタとは、原資産が1円上昇することによるオプションプレミアムの変化量のことを指します。
日経225オプションでは、原資産である日経225オプションが100円上昇すると、アットザマネーのプレミアムは50円上昇します。
これをデルタ0.5と表現します。
日経平均が100円上昇する際に日経平均先物は100円×1,000倍=10万円の価格変動がありますが、日経225オプションのプレミアムは50円、実際の価格にして50円×1,000倍=5万円上昇します。
金オプションのデルタ
前述したように、金オプションのデルタは0.05相当となります。
プレミアムの変化量で考えると、金価格が100円上昇した際に、金オプションのプレミアムは50円上昇します。
この点だけを捉えればアットザマネーのデルタでも0.5と説明はできるのですが、実際の損益ベースで捉えると数値が異なってきます。
金オプションの場合、金標準取引価格が100円×1,000倍=10万円変動した時に、金オプションの価格は50円×100倍=5000円しか変動しないからです。
つまり単位乗数が異なるために、実際の損益ベースで考えるとデルタは0.05でしかないのです。
日経225オプションをベースに考えると、非常に小さいデルタとなります。
デルタが小さいことによる問題点
デルタが0.05となったときに発生する問題点があります。それは、デルタ0.05をヘッジする商品がないのです。
日経225オプションの場合は、アットザマネーのオプションがデルタ0.5であり、日経ミニはデルタ0.1になっているので、オプションのデルタヘッジとして日経ミニを利用することができました。
しかしながら、金オプションの場合はデルタが0.05であり、金ミニやゴールドスポット100はデルタ0.1なので、オプションよりも大きいデルタの商品しかありません。
解決策
その場合は金オプションを2枚買ってデルタ0.1にすることで、金ミニやゴールドスポット100を買ってデルタヘッジをすることになります。
しかしながら、デルタを常にニュートラルにする戦い方であるダイナミックヘッジはできません。
もしダイナミックヘッジをする場合はオプションを10枚買う必要がでてきます。
つまり、最小単位で取引する場合には少額で始めやすいメリットが有る一方で、このようにオプションと原資産によるデルタヘッジの組み合わせについては数値を考慮して複数枚ポジションを取る必要が出てきます。
では金オプションを最小単位で購入することにメリットはないのでしょうか。そんなことはありません。
非常に取引の幅が広がる戦略を組むことができます。その一例を紹介します。
シンセティックポジション
もしあなたが金価格が4300円以下になったら非常に割安だと考えたとします。
そのときに、現物を4300円で指値をする代わりに、プットP4300を1枚売るのです。
その際に、P4300を1枚売って得たプレミアムの範囲内で購入できるコールを購入します。
例えばC4800を1枚買えたとします。
この場合にはC4800を1枚ロングして、P4300を1枚ショートします。
このポジションにかかるコストは、0円となります。コスト0円でこのようなポジションを取れたということになります。
(※建てる証拠金は拘束される場合があります)
金が暴落した時
金オプションは、ヨーロピアンタイプの差金決済になります。
SQ日に4300円以下になれば、実際に付いたSQの価格と4300円の差額がオプションからの損失となりますが、その価格で金ミニやゴールドスポット100を1枚ロングすることで、4300円で原資産を1枚購入したとみなすことができます。
金が暴騰した時
もし金が大暴騰した際に、C4800がありますので、上昇益を確保することができます。
このように金の暴騰時にも利益を取り損ねる機会損失を防ぐことができます。
この戦略の利点
もし金ミニやゴールドスポット100だけを1枚購入していた際には、買い付けの証拠金が必要となります。
そこで、このようなコール買いとプット売りを合成したポジション、つまりC4800をロングしてP4300をショートすることでプット売の証拠金のみで済み、また支払うプレミアムコストはほぼ0円とすることができます。
課題点
金オプションは1年先の満期しかありません。
よって金の上昇が5年10年かかると思ってる場合は、この戦略を採用する場合にはオプションが満期を迎える際にはロールオーバーをしていく必要があります。
また、金がじわじわ上がる時の資産形成としては原資産を購入していたほうが良いでしょう。
TOCOMによる金現物取引
TOCOMでは金現物取引も始まりました。
金の純度を示すインゴットの刻印については、TOCOM指定の業者のものを扱うことになっているので、TOCOM自身が刻印を施すわけではないようです。
この制度の開始によって、これまで金現物を取引できなかった商品先物業者も金現物取引に参入ができるようになるものと思われます。
今後は金オプション取引業者の中で、オプションから現物保有まで完結できるようになることが見込まれますので、非常に将来性が楽しみな制度改正でもあります。
まとめ
金オプションはデルタ0.05相当なので、デルタヘッジをする際には金オプションの枚数を増やす必要があります。
ダイナミックヘッジは最小単位で行いにくいですが、シンセティックポジションなどのオプションならではの取引方法を行うことで証拠金を小さくして金への投資が行えるようになります。
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