あなたがカレンダー系スプレッドを保有していて決済する場合には、ポジションの反対売買と、プットコールパリティによる損益の固定の2つの選択肢があります。
しかし、日経225には、3月末と9月末に権利落ちと呼ばれる価格の下落があります。
この権利落ちを考慮していないと、あたかも有利に見えるポジションだったり、全く利益の見込みがないポジションのように見えてしまうため注意が必要です。
年に2回しかない権利落ちを忘れないように、この記事できちんと理解して役立てるようにしましょう。
権利落ちとは
権利落ちとは、日経225採用銘柄の1つ1つについて、配当後に価格下落することを言います。
225銘柄の配当日が分散されていれば影響は少ないのですが、年度末である3月末と、中間決済である9月末に配当を実施する企業が多いため、特に目立って権利落ちが発生することで知られています。
その権利落ちの額は、決まってはいませんが80円~140円程度となります。
投資行為として配当が得られた直後の株は、その価値は配当の分だけ下がります。
そうでないと配当を受け取ってさらに株を保有していた方が配当の分だけ有利に働くため、配当直前に保有していた人のほうが有利であるということになり、配当前に人気が集中して株価が下がっていることになるはずだからです。
カレンダースプレッドとは
カレンダースプレッドとは、限月を異なる2つの銘柄でポジションを組成することになります。
例えば9月限の9C16500をショートして、10月限の10C16500をロングする、と言った具合に異なる限月でお互いにヘッジするような関係のポジションのことを指します。
上記をカレンダースプレッドと呼び、逆に期近のオプションを買って期先のオプションを売ることをリバースカレンダースプレッドと呼びます。
このカレンダースプレッドを検討する際に権利落ちを考慮しないといけないのです。
ではこの配当落ちがオプションにどのように影響しているかを見てみましょう。
権利落ちによる日経225ミニの価格
例えば現在日経ミニ9月限が16750円のときに、9C16500をショートして、10月限の10C16500をロングしたとします。
綺麗なカレンダースプレッドになっているように見えて、10P16500 の原資産価格は、実は日経平均ミニ9月限ではなく、10月限なのです。
前述した権利落ちを考慮すると、実際はおよそ120円安くなっています。
上から2番目が9月限のミニで16,855円、上から3番目が10月限のミニで16,735円と、120円の開きがあります。
この開きは、さやとして収束するものではありません。
配当による権利落ちの差分として開いているものなので、収束するわけではないのです。
そしてこの原資産価格を元に、10C16500が取引されています。
つまり9C16500と10C16500は、原資産価格が異なるのです。
原資産価格が異なるということは、リスクパラメーターも厳密には異なってきますので、仮に同一権利行使価格でカレンダースプレッドを組んでいたとしても、実際はダイアゴナルスプレッドとなっていることがあります。
ちょうど権利落ち価格が125円であれば、権利行使価格を125円離したポジションで組むことで純粋なカレンダースプレッドとして計算できることになります。
同限月ポジションなら影響は軽微
また、権利落ちは9月末に起きますので、9月限のポジションと10月限のポジションを保有していた場合には先に9月限のポジションがSQを迎えて決済されるので、残った10月限のポジションを考慮すれば良いので権利落ちはさほど影響がありません。
(10月限のミニと10月限のオプションを用いれば、権利落ちが発生してもそこにさやが生まれたりはしないのです)
よって9月限のポジションを決済した時に10月限がインザマネーになって反対売買できない時に、全て10月限のオプションを使用してプットコールパリティを行うことで、損益を固定してSQを通過して決済する手法を取ることが出来ます。
プットコールパリティの事例
では前述した9C16500をショートして、10月限の10C16500をロングするポジションで9月SQを迎えて、原資産価格が上昇して終わった時を考えてみましょう。
10月限C16500が625円であり、同じく10月限P16500が370円となっていました。
この時に9月限のミニは16,855円なので、プットコールパリティで損益を固定したとすると、現在の原資産価格と権利行使価格との差が損益となりますので
- 原資産価格16,855-権利行使価格16,500=355円(絶対値)
- コールプレミアム625円-プットプレミアム370円=255円(絶対値)
となり両者に乖離が生じます。
ここでは原資産価格が9月限ではなく、10月限の16,735円を使うべきなのです。
10月限を利用すると
- 原資産価格16,735-権利行使価格16,500=235円(絶対値)
- コールプレミアム625円-プットプレミアム370円=255円(絶対値)
となり、乖離が少なくなりました。
インザマネーの最終約定値には注意が必要
しかしながらインザマネーのオプションの価格を参照する際には、注意が必要です。
インザマネーの場合には取引価格が今の価値を性格に表しているとは限らないのです。
そこで板を見てみると
10C16500はおよそ610円で取引されているべきだということが分かります。
前述した625円というのは最終約定値にすぎないので、実際は実勢価格では610円が妥当なのです。
- 原資産価格16,735-権利行使価格16,500=235円
- コールプレミアム610円-プットプレミアム370円=240円
というのが現時点でのプットコールパリティの評価となります。
Prizeは期先原資産に対応したツール
日経225オプションのポジションをシミュレーションできるPrizeシミュレーション版については、下図のように期近と期先で原資産価格を独立して算出していますので、正確にリスクパラメータを把握できます。
(8/31終値として、9月限原資産は16,890円、10月限原資産は16,765円を見ていることが分かります)
フリーのプライサーツールなど、場合によっては原資産価格を全て1本(期近のみ)としている場合がありえますので、注意して観察するようにしてください。
まとめ
日経先物は9月末に権利落ちが発生するため、ミニ10月は9月先物より安くなる傾向があります。
その額は概ね80円~140円程度乖離しますが、どのような評価がされているかはミニの価格を比較することで判断できます。
また、それを利用したオプションでプットコールパリティを利用する場合には、限月を揃える必要があります。
よって採用する戦略の評価が著しく良好、または優位性がある(または全く利益になる見込みが無い)という場合には、プットコールパリティを利用して妥当な先物価格を算出してみると、実は権利落ちを考慮していなかったということが判断できるようになります。
権利落ちは3月と9月にあります。
この月末をまたぐカレンダー系スプレッドには注意が必要です。
またカレンダースプレッドについては、カレンダースプレッドで満期間近の損益がブレやすい理由とはも併せてお読みください。