あなたは「リスクヘッジ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
簡単にご説明すると、資産が一方的に下落することを最小限に食い止めるために、一方的に下落したら利益になるような対処をしておくことです。
生命保険は、まさに「リスクヘッジ」です。
将来の危険を予測して保険をかけますので、お仕事の収入が途絶えた時に家族を守ることが出来ます。
そのための保険料を毎月支払って安心を得ています。
このリスクヘッジがオプションの本質になりますので、ルールや仕組みについて説明していきましょう。
オプションは今すぐ簡単には始められません
オプショントレードは他の投資と比べて実際に取引している人がとても少ないです。株式投資やFXの1割以下です。5%程度とも言われます。
その理由の1つに、オプション口座を開設するのには投資経験が1年以上必要という制約があります。
さらに、口座の保有資金以上にマイナスになる可能性もあります。
(その場合は追加でお金を入れなければいけません)
リスクが高い投資であるから、口座開設のハードルを高くして自己管理がきちんと出来る人だけがトレードできます。
また、最低でも100万円程度、自由に投資するには、300万円の資金は用意しておいた方が良いでしょう。
このような説明をすると、「誰がそんなジャンルにチャレンジするのか」と思うかもしれません。
実はこのオプションを使うと、株価が上がっても、下がっても利益を出せるうえに、価格が動かなくても利益を出せるので、収益チャンスはとても多いのです。
例えるなら飛行機のコックピットのように、まっすぐ進むだけであっても計器類がいっぱいあって、操縦は難しい。
機械のコンディションや天候にも左右されます。
でも操縦方法をマスターすれば、自由に空の旅ができます。目的地にも安全に進むことが出来ます。
これを実現できるのがオプションです。
市況によって戦い方を変えられる
他の投資でありがちな「稼げない状況なので今日はお休み」ということはオプションでは起きません。
必ず利益になるトレードが存在しているので、その中からどれかを選んでトレードをすることで利益になる可能性があります。
きちんと研究してノウハウ(技術・手段・戦略)を身に付ければ、勝率をコントロールしたり、損失額を小さくする工夫も可能になります。
このような魅力を勉強をすれば誰でも身に付けることが出来ます。
オプショントレードの参加者について
実際のところ、オプションの参加者たちは、個人投資家よりも
・国内、海外の銀行や機関投資家
・先物トレーダー
・海外のヘッジファンド
などの参加者がいます。
ヘッジファンド、と聞くと得体のしれない凄い頭脳集団のように聞こえるかもしれませんが、冒頭のリスクヘッジを目的とした取引を主体的に行っているファンド(資金を集めて運用する会社)のことです。
ヘッジファンドは当たり前のようにオプションを活用していますので、特に海外の有名な証券会社、メリルリンチやゴールドマンサックス、モルガンスタンレーなども大量のオプションを売買しています。
大手銀行が「守りの手段」として、資産を守るために掛け捨て保険としてオプションを使うこともありますし、ヘッジファンドがオプションを使って利益を狙うことも行っています。
そのようなプロ中のプロが参加している世界になります。
また、単純なマネーゲームではなく、「金融工学」と密接な関連があります。
その証拠に、ブラック博士とショールズ博士が考案したオプションの式はなんとノーベル経済学賞を取っています。
また、証券外交員の資格を取得するためにオプションの知識が必要となります。
なので、利益を出すために勉強する人だけじゃなく、資格を取るために勉強する人、学問として勉強する人も集まります。
実は資産を守るための手段です
投資経験が必要なオプション取引は、リスクヘッジを主体とした、守りの投資手法なのです。
なぜ投資に守りが必要なのか。
サッカーをイメージしていただければわかると思いますが、攻めと守りをバランスよく組み合わせるととても強いチームになりますよね。
投資の世界でも同様に考えることが出来ます。
FX FW(フォワード)・・・点取り屋
株 MF(ミッドフィルダー)・・・ゲームメイクし点取りに絡む役
金 DF(ディフェンダー)・・・相手の攻撃を防ぐ役
オプション GK(ゴールキーパー)・・・唯一手が使えるゴールの守護神
多くの人は攻めるFWとMFにしか注目をしていないのがほとんどです。
攻めるのは魅力的ですし一躍スーパースターになれることを夢見て憧れてしまいます。
本田選手はみんなの憧れですよね。
ただ、攻撃するだけじゃなく、資産を守る方にも目を向けることで、チーム全体のバランスが取れます。
資産を守るための最後の砦であるゴールキーパーの役割を担うのが、オプションです。
もちろんゴールキーパーと言っても点を取りに行くこともできます。
攻めの投資にすることもできます。
守りもできるし攻めもできる。そしてゴールキーパーのように守護神にもなれる。それがオプションの役目です。
日経新聞にも載っています
日本でトレードできるのは「日経225オプション」が最も有名です。
この日経225というのは日経平均株価のことです。
ニュースの最後に市況情報としてテロップで、「今日の日経平均株価は20,100円、為替は1ドル125円」と言われるときに使われている株価が日経平均株価です。
これは日本を代表する225銘柄の個別株を平均して(単純な平均ではありません)、今の景気を表す指標としてよく用いられます。
その日経平均株価に対応したオプションを売買するのが、日経225オプションになります。
新聞でもオプション関連の記事は日経新聞に掲載されていますが、一般紙ではまず登場しません。
「日経平均株価下落 プットが買われる」
「日経平均株価続伸 コールが買われる」
「ボラティリティインデックス(日経平均VI指数)」
といった用語がオプションの専門用語です。
オプションの記事は日経新聞を隅々まで読んでいる方か、マネー雑誌の特集などで取り上げられるのを目にしない限り、存在すら知られることもないという、隠れた存在です。
でもその個人投資家には目立たない隠れた存在が、海外のヘッジファンドには活発に取引されています。
この情報の少なさも、一部のマニアを惹きつけて離さない理由なのかもしれません。
リスクの大きさと売買期間について
オプショントレードは株式投資の信用取引と同じように「追加証拠金(略して追証(おいしょう)と言われます)」を要求されるルールがあり、投下資金以上の損失を被る可能性があります。
リスクの大きさと売買期間をイメージ化するとこのようになります。
また、売買イメージとしては、オプションはその性質上2、3日~1ヵ月以内に結果が出る取引が多いです。
日本でトレードできるオプション
日本でトレードできるオプションは日経225オプションの他に、株オプション、FXオプション、金オプションもあります。
今のところは日本でオプションと言えば日経225オプションがメジャーです。
オプションは日本取引所グループの中の東京取引所と大阪取引所で売買されています。
トヨタやソニーなどの個別株や株オプションは東京取引所、先物や日経225オプションは大阪取引所になります。
日経225オプションを取引する場合には、大阪取引所の口座を開設することになります。
オプショントレード売買期間は、およそ2,3日~3週間ほど結果を出す中短期トレードとなります。
口座開設要件
オプショントレードは、誰でも証券口座が開けてトレードを始められるわけではありません。
オプショントレード用の口座を開くには以下の要件が必要です。
・一定量の資金
・株式投資などの投資歴1年以上の経験
・電話による審査
一定量の資金というのは証券会社独自のルールによりますが、冒頭に説明したようにおよそ100万円以上必要となります。
300万円程度資金を入れておくと、ストレスが無く思い通りなトレードができます。
投資歴1年以上という要件は、株式投資、FX、不動産投資、債券、投資信託、金投資など、銀行預金以外のリスクがある投資経験が求められます。
開設要件である投資歴1年以上は、開設する証券会社以外の実績でも良いので、他の証券会社などで運用実績があれば記載してください。
損が大きいと追証(おいしょう)となり追加で資金を投入しなければいけませんので、強制的にロスカットされるFXと異なり、投下資金以上に損しないように自らコントロールする必要があります。
「追証」が発生した時には翌日のお昼までに追加で証拠金を証券口座に預けます。
その約束が守られないと保有しているオプションを全部決済させられます。
このようなルールをきちんと理解しているか確認するため、投資歴1年以上の経験だけではなく電話による審査があります。
トレードの仕方
取引は主に証券会社に口座を開設してオンライントレードとなります。
一部電話での取引もできますが、手数料が高くなることと売買チャンスを逃さないためにオンライントレードが主流となっています。
オプショントレードを扱っている大手のオンライン対応の証券会社は
SBI証券
松井証券
カブドットコム証券
楽天証券
などがあり、いずれも株式投資用の口座を開設した後に、先物・オプション口座を開設する流れが一般的です。
オプション取引口座のみ開設はできません。
なぜかというと、総合口座に資金を移してから証拠金に振替をするため、まずはあなたの銀行口座から振り込むための証券総合口座があって、それから証拠金に振替して初めてトレードする資金を確保したことになります。
口座開設
証券会社の口座開設には
・先物、オプショントレードの知識
・保有資産の総額
・投資歴
・運転免許証、健康保険証などの公的な証明書
・印鑑
が必要となります。
株式投資は知識が無くても口座開設できてしまいますが、オプション口座は知識を求められます。
チェックボックス形式で「投下資金以上の損失を被る可能性があります」という点を確認したうえで開設フォームに進み、さらに電話でも確認が来ますので、知識がない初心者さんは安易に口座開設できない仕組みが構築されています。
5~10年以上オプショントレードの経験があると電話連絡はほとんど来ません。
私はオプショントレード歴10年以上にチェックして、電話連絡もなく口座開設が出来ました。
このような開設の要件がありますので、投資初心者がいきなりオプショントレードするよりも、FXや先物など様々な経験を経験した結果、オプションにたどり着く方が多いですね。
具体的なオプション売買のイメージ
オプションを買う場合
オプションは表示価格の1000倍の価格です。例えば340円で1枚買った場合、34万円を支払います。
この時に口座には34万円あれば買うことが出来ます。(手数料は別途かかります)
オプションを売る場合
オプションを売ることもできます。
340円のオプションを1枚売ると34万円が口座に入ってきます。
ただしこれは預かっているだけなので、確定した利益ではありません。
お金を預かった状態で損をしたら、受け取った34万円から損失の分を上乗せして返却しないといけません。
損失の時にきちんと返せる人の条件としておおむね60~80万円程度の証拠金が口座に入っていないと売れません。
手元の資金が0円でオプションを売ることは出来ません。
手数料
売買手数料は約定代金の約0.21%が標準ですので、FXと異なり手数料が取られます。
よって大きな金額をトレードすると、手数料もかかってきます。
税金
FXと同様、申告分離課税で確定申告です。
株式投資や投資信託などで証券口座を開くときに選択する「源泉徴収あり」を選択した場合は確定申告は不要ですが、FXやオプションは源泉徴収ありが選択できませんので、必ず確定申告が必要となります。
税率は約20%を所得税とは別に(分離課税)確定申告にて税金額を決定し納めます。
損失額は最大3年間繰り越すことができます。
トレード事例
時間経過をお金に変える作戦
動かないと利益になる取引があります。
2015年5月に、今の日経平均株価が19,500円あたりにいるときに、「1か月後に1,000円離れた20,500円以上にはならないし、逆に18,500円以下にもならないだろう」という戦略を取った場合、オプションを売ります。
オプションの売りはリスクが大きいのですが、5月11日時点では205円(20万5千円)の受け取りがあり、結果的には6月12日まで何もしないで20万5千円を満額利益となりました。
このように1ヶ月何もしなくても20万円の利益が出る戦略もあります。
(この時の証拠金は約100万円程度なので、実質利回りとしては1ヶ月20%です)
保険のような作戦
2011.3.11は記憶にあると思いますが東日本大震災が起きた日です。
相場が急落して皆さんビックリしたのを覚えておられる方もいるかと思います。
この時に「これ以上下がったらまずい」ということで、保険として下がったら利益になるオプションをわずか4円(4千円)で掛け捨て保険として買ったとします。
実は3月11日の金曜日に地震が起きた時はそれほど暴落はしませんでしたが、翌週月曜に原発の問題が午前11時ごろ発表されて、そこから一段と暴落していきました。
3月15日には、わずか4円のオプションが390円(39万円)となっていました。
わずか3日間で約10倍に価値が上がりました。
オプションを買うときには買うお金だけが必要であり証拠金は要りませんので、4千円を持っていれば38万6千円の利益が出たことになります。
いずれもとても特徴的なトレード方法を解説しましたので、毎回このようなことが起きるとは限りません。
ですが、このようなことが実際に起こりえる世界です。
また、オプション取引で心の隙を「ドーーン」と突く手口も紹介していますので併せてお読みください。