オプション取引で「今の損益グラフ」を描画できる2つの方法

投稿者名:金森 雅人

あなたはオプション取引を行うときに、エントリーしたポジションの損益グラフを見ていますか?

日経225オプションを満期まで保有する場合には問題ありませんが、満期まで保有しないスタイルの場合は、期中で反対売買をして利確や損切りをします。

その時に必要なのが、「今の時点の損益グラフ」です。

損益グラフには3種類あります。

・ポジションのエントリー前の形

・エントリーから満期までの値動き

・SQの損益

よくWebサイトで見かける損益グラフは、エントリー前とSQの損益の2つだけです。

しかし期中決済をすることを考えると、トレード中の損益グラフを見ないとリスク管理ができません。

この記事では、損益グラフを期中に描くツールとして

・松井証券のネットストックスマート

・Prize

を紹介します。

【目次】

1.初心者が勘違いしやすい損益グラフの3つのパターン

2.今の損益グラフを松井証券のネットストックスマートで見る

3.今の損益グラフをPrizeで見る

4.今の姿を知りリスク管理するのが期中決済でのオプション取引

5.まとめ

 

1.初心者が勘違いしやすい損益グラフの3つのパターン

あなたはオプション取引の戦略をいくつ知っていますか?

(1) コールの買い
(2) レシオ・コール・スプレッド
(3) バーティカル・ブル・スプレッド
(4) プットの売り
(5) プットの買い
(6) レシオ・プット・スプレッド
(7) バーティカル・ベア・スプレッド
(8) コールの売り
(9) ロング・ストラングル
(10) ロング・ストラドル
(11) ショート・ストラングル
(12) ショート・ストラドル

こちらはJPXのページにも載っている代表的な戦略名です。

コール買い、プット買い、コール買い、コール売りはオプションの基礎的な銘柄に見えますが、これらは「戦略」に分類されます。

そして初心者の方が勘違いしやすい損益グラフの見方について3点挙げます。

1.掲載されている満期の損益図が実現するまでは取引できない(=期中決済ができない)と思いがち

2.戦略に縛られてしまうと、教科書以外のポジションを組んだあとどうしていいかわからない

3.オプションを期中で売買するには、今のパラメータを見れずリスクを把握できてない

以上3点の理由から、日経225オプションを学ぶなら「ギリシャ文字」といわれる、デルタ・ガンマ・セータ・ベガを先に学んだほうが良いです。

1.掲載されている満期の損益図が実現するまでは取引できない(=期中決済ができない)と思いがち

JPXのWebサイトに掲載されている代表的な戦略の表です。

JPXのWebの引用です。(https://www.jpx.co.jp/jscc/information/news/20200306-01.html

一覧の下方ページに、それぞれ損益グラフの事例が載っています。

これは(6)レシオプットスプレッドの形です。

緑の点線はプット買い、青の点線はプット売りを示していて、赤い線が満期の損益グラフです。

 

JPXのサイトなどで説明される損益グラフは満期の姿です。

その満期の姿以外の「期中の損益グラフ」を描けるツールは数えるほどしかありません。

ポジションが1つや2つ程度なら表示されるものもありますが、複雑なポジションには対応していません。

日経225オプション圧倒的には期中で売買されているほうが多く、イメージ図のような損益になるまで待つのはSQで勝負する人のみです。

日経225オプションはレバレッジが高いので、リスクを考慮して期中で決済することのほうが多いので、今の損益グラフを見たいですよね。

オプションを学習する際に必ずこの損益グラフが登場します。

このレシオプットスプレッドはプット買い1枚と、プット売り2枚で構成されています。

2.戦略に縛られてしまうと、教科書以外のポジションを組んだあとどうしていいかわからない

プット買いやプット売りは「戦略」です。

よってこのレシオプットスプレッドは戦略と戦略を合わせた合成戦略です。

「プットを買ってさらに権利行使価格が遠いプットを売るのはデビットスプレッドだということは理解していますが、2銘柄同時に発注しなくてもいいんですか?」

という質問をいただくこともあります。

ポジションは同時に発注しなければいけないわけではなく、損益を固定するために後からオプション銘柄を増やしたり減らしたりします。

これは戦略ありきでポジションを組み立てている例だと思われます。

「形」から入ると、応用が利かなくなる事例

この形から学ぶ弊害としては、「枚数は1:2じゃなくて1:3ではどうか」「途中で1枚売りポジションを買い戻していいのか」という疑問をいだく初心者の方もいます。

さらには、この赤い損益グラフは満期までも続けた時の損益を表していますが、途中経過はどこにも書いてありません。

つまり、損益グラフを見て分かるのは、戦略同士を合成した各種戦略の満期の姿、だけです。

初心者の方が間違いがちなのが、満期の損益グラフまでは売却できないと思いこんでしまうことです。

3.オプションを期中で売買するには、今の状態を見れずリスクを把握できてない

損益グラフは、正しい損益グラフを描画するツール非常に少なく、上記の損益グラフのようにエントリーの姿とSQ時の姿だけしか表示されていないことが多いです。

特に期中のリスクを評価するギリシャ文字を正しく把握したいですよね。

このような問題を解決するには、ツールを使って描画させると効果的です。

2.今の損益グラフを松井証券のネットストックスマートで見る

ポジション入力をすると、満期の損益グラフと今の損益グラフが出ています。今の損益グラフは赤で表示されています。

「保有建玉を追加」することもできますし、仮想ポジションで好きな戦略をシミュレーションできます。

また、カーソルを合わせた場所のギリシャ文字の情報も得ることが出来ます。

下図は、上記の戦略を10日後に時間を早めた場合ののポジションの損益グラフです。

仮想ポジションとして今取引でいる銘柄を自由に選んで、損益グラフを作ることが来ます。

しかしバックテスト的に昔の日付で検証することはできず、「今この瞬間」のリスクを把握できるツールです。

3.今の損益グラフをPrizeで見る

満期の1日前でも山の頂点には届かないことが分かる

下記はPrizeを利用した検証です。

プット買い戦略とプット売り戦略を組み合わせた、合成戦略です。

エントリーの時の姿はこのようになります。満期が青い線で示されていて、緑の線が今の姿です。

よく書籍などで登場する損益図は青の満期の姿だけです。

青い線が満期の姿を示していて、JPXのWebサイトの赤で示さていた線です。

緑の曲線がエントリーしたときの損益グラフで、最初は曲線で表わされているのですが、普通の損益図ではこの緑の線を示した曲線がありません。

取引した直後は緑の線、そのあと満期までに損益が変わっていきます。

満期の1日前の損益グラフ

次に、満期の1日前がどのような損益化を示したのが下図です。

黄色い線が予想された線です。

満期の1日前なのに、黄色い線(=予想図)が青い線(=満期の形)と結構離れていると思いませんか?

別な言い方をすれば、最大利益となる20750円に一日前にいたとしても、黄色い線はもそれほど含み益が出てないということです。

満期は最大45万円ですが、1日前は30万円にも届きません。

このように満期の姿の戦略は、未来のオプションの姿を今眺めています。

株式投資やFXなどは、今の姿を見てトレードするのが自然ですが、オプション取引をする人の多くはこの将来なるであろう損益図を頭に描いています。

オプションを勉強するといつもこの損益図が出てくるし、最後の姿が勝っていれば安心できると思って勉強を進めてくると、この損益グラフで示されいないパラメータが出てきて、どうやっていいかわからずに「オプションは難しい」となってしまいます。

これらの戦略は「型」です。

このグラフから分かることは、黄色の線(=SQ前日)が青線の山の頂点に届くのは、この1日前のグラフから翌日=SQ満期まで待たないといけません。

意外と黄色の線(=予想含み益)が利益を出していないような気がしませんか?

満期まで待つということは、青色の山の頂点にピタリとSQ値が来ないといけません。

満期の姿で最大利益を得るのはかなり実現性が無い戦略なのですが、結構人気があり多くの投資家はピンポイントで当たらなくても利益になるゾーンが広いから大丈夫じゃないかと考えて安易にエントリーしがちです。

21,000円より上でSQ値が付けばいいですが、それよりも下だと先物ラージを取引しているのと同じリスクの取り方です。

4.今の姿を知りリスク管理するのが期中決済でのオプション取引

日経225オプション取引を学ぶとき、どこから学ぶのが一番効率よく体系的に学べるでしょうか?

まず初めに戦略を覚えてから、オプションの基礎を学べば効率が良いと思うでしょうか。

戦略を先に学ぶと、冒頭お話ししたように戦略に縛られて応用が利かなくなります。

なぜなら、もっと戦略をかみ砕いてパラメータにしたのが「ギリシャ文字」で、最小単位はコールやプットといった「戦略」ではなく、このギリシャ文字が考え方の土台にあるからです。

土台を知らずにコールやプットを売買することは、1枚2枚なら分かっても複雑なポジションを持つと気づかないリスクを取っている可能性があります。

本来はギリシャ文字を学んでから、アウトプットとして戦略が身に付いているほうが実は効率的です。

私自身もオプションは「型=〇〇戦略」」から学んだため、よくわからない状態でした。

2年くらいたった時に大きな下げで資金が半分になって苦しんでから、オプションの本質が見えてきた気がしました。

その時に学んだのが、【仕組み】を先に理解しなければダメだということ。まずはオプションの基礎を身に付けていく中で結果的に「型=戦法」が自然に身に付く方が効率的です。

将棋で例えるなら

型=「矢倉戦法」を実現する

仕組み=駒の1つ1つの動きを覚える

ということ。

対局でどのように陣形を変えていけばいいのかを考えるのは、基礎の駒の動きを理解しないといけませんよね。

日経225オプションも、「〇〇戦略」という「型」から入ると簡単に見えますが、本質にたどり着くのに相当の時間がかかるし理解できたか保証もありません。

しかも誰もそのことについてだれも触れないので初心者には気が付かない場合もあります。

将棋の【仕組み】は駒の動きだとしたら、日経225オプションに置き換えると何になるでしょうか?それが「ギリシャ文字」です。

最初に覚えるのは、実はギリシャ文字が先です。コール買い、コール売り、プット買い、プット売りは立派な戦略なので、戦略よりも先に覚えておいたほうが効率よく学習できるのがギリシャ文字から学ぶスタイルです。

戦略も大切ではありますが、日経225オプションを正しく理解するためにはデルタ・ガンマ・セータ・ベガの4つの数字をマスターすることです。

原理原則を覚えれば、自然に戦略が身に付きます。この順番で学ばないと、いつまで経ってもオプションで悩むばかりです。

これらの4つのギリシャ文字の組み合わせや数値に強弱をつけることで、
・コールの買い
・コールの売り
・プットの買い
・プットの売り
という戦略を作ることが出来ます。

先日も「プットを買ってさらに権利行使価格が遠いプットを売るのは デビットスプレッドということは理解していますが、2銘柄同時に発注しなくてもいいんですか?」

という質問もいただきました。

これは戦略ありきでポジションを組み立てている例だと思われます。

先ほども伝えましたが、コール買い戦略とかプット買い戦略は、将棋で言うところの戦法です。

「仕組み」を理解するのはギリシャ文字のほうです。

冒頭にあげたJPXのサイトにもある12個の戦略も4つのギリシャ文字で表現できます。

もちろん、人によっては「型=戦略」を覚えれば、それで充分だという人もいるかもしれません。

その学び方は否定しませんが、基礎から始めたほうがオプション戦略は腑に落ちやすいと思います。

オプショントレード普及協会の学習コンテンツではこのような内容を学ぶことができます。

5.まとめ

オプションの知識を増やすには「戦略」から入るよりも「ギリシャ文字」から学んだほうが効率的です。

なぜならギリシャ文字の数値の強弱で様々な戦略を組み立てられるからです。

4つのギリシャ文字の強弱を考えれば、あなたが取りたい戦略も生み出せます。

【ギリシャ文字】
・デルタ
・ガンマ
・セータ
・ベガ
を身に付ければ


・コールの買い
・コールの売り
・プットの買い
・プットの売り
を表現できて、その組み合わせである「戦略」


(1) コールの買い
(2) レシオ・コール・スプレッド
(3) バーティカル・ブル・スプレッド
(4) プットの売り
(5) プットの買い
(6) レシオ・プット・スプレッド
(7) バーティカル・ベア・スプレッド
(8) コールの売り
(9) ロング・ストラングル
(10) ロング・ストラドル
(11) ショート・ストラングル
(12) ショート・ストラドル

これらも理解できるのできます。

オプション取引で最初に学ぶべきもののイメージが湧いたでしょうか。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

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