ショートストラドルはリスクとリターンのバランスが悪い戦略

投稿者名:金森 雅人

あなたはオプションを売っておけば時間が経過すればチャリンチャリンとお金が入ってくる、「ショートストラドル」に魅力を感じていたりしませんか?

その気持ちはよく分かります。私も初期のころはショートストラドルやショートストラングルがまるで聖杯のような夢の戦略だと思っていました。

しかし、オプションを知れば知るほど、オプションの売り戦略はリスクを過度に取っているから、コツコツ(に見える)リターンを得られるにすぎないとわかりました。

 

ショートストラドルは魅力的ですが、安易に取引する人にとって致命的な避けられない穴があります。

その避けられない穴について解説します。

【目次】

1.ショートストラドルの穴とは約定しない時間帯

2.未曽有のことを起きるのを心配するのがリスク管理

3.イレギュラーにイレギュラーが重なって一発食らったら退場

4.どうしてもショートストラドルをしたいなら大損失を防ぐ商品で行う

5.まとめ

 

1.ショートストラドルの穴とは約定しない時間帯

ショートストラドルの一番の悩みは、ズバリ「約定しない時間帯がある」点です。

ザラ場中に板があって、約定できるならすぐ逃げることはできるかもしれません。

それは問題ではありません。

(もっとも、約定できるならすぐ逃げられるというスキルを持っている人じゃないと、このショートストラドルは危なくて取引を推奨できませんが)

 

最も避けたいリスクは

  • 先物すら発注できない時間帯がある(夜中5:30~朝8:30まで)
  • 土日や祝日に取引所が閉まっていると対処できない
  • サーキットブレーカーが発動するくらいの変動時に、板が無くなる

この一瞬です。

この時に何も対処できないのが、致命傷です。逃げられない時間帯が存在することが、この戦略の大きなリスクです。

少なくとも先物ででも対処出来ればまだいいのですが、取引所が閉まっていたら何もできません。

夜間ももちろんそうですし、土日やGW10連休中みたいな、祝日を挟んだ時も何もできません。

さらに、サーキットブレーカーが起きるような変動は板がとびとびになりますので、万が一サーキットブレーカーが発動したら、発注停止になって何も手立てができません。

2.未曽有のことを起きるのを心配するのがリスク管理

このようなイレギュラーなことが起きるのは未曽有の事態、万が一よりも可能性が低いかもしれません。

でも、その可能性が低いことがもし仮に起きたら、一発退場で追証になる可能性があります。

 

阪神大震災は明け方に起きました。

東日本大震災は14:46とザラ場中でしたが、あと30分ほど経ったら取引時間外です。

9.11テロは21:45なので、夜間が空いているのでセーフと言えますが、オプションの流動性は低かったでしょう。

 

このようなイレギュラーな100年に一度のことが、都合よく取引時間内起きてくれる保証はどこにもありません。

「逆指値しておけばいいじゃん」という考えは、リスク分析が足りません。

逆指値で発注トリガーを行ったとして、発動するのはザラ場中のみです。

 

もちろん通常のザラ場なら、逆指値しておけば何とかなりますが、急激な変動が起きたら逆指値で条件成就して指値注文が入っても、その指値価格をすっ飛ばして下落している可能性が高いです。

かといって、成り行き注文をしておくと、オプションの場合はとんでもない価格で約定する可能性もありますので、ミニを使うしかありません。

ミニを使うことになると、デルタヘッジをするためにリアルタイムのデルタが必要で、しかもミニが入ったらその瞬間からデルタヘッジでミニを売り買いしないと安心できない時間帯になるかもしれません。

でも、肝心の時間外や休日には逆指値注文も、指値注文も成り行きも入りません。

約定することが無いので。

そうすると、市場でオプションやミニでヘッジを考えていても、出来ない時間帯があるのです。

 

「そんな時間帯にはポジションをクローズするから平気」

という方はリスク管理できています。

夜間の5時ころにポジションをクローズして、翌朝9時に再開する取引を繰り返せば、市場が動いていないときに余計なリスクは取らなくて済みます。

・・・しかし、これでは利益を増やすことも、セータを取ることも想定より小さくなってしまうかもしれません。

リスクを引き受けるからセータという時間価値の減少を利益に出来る。
それがショートストラドルのメリットなのだから。

3.イレギュラーにイレギュラーが重なって一発食らったら退場

もし万が一、イレギュラーなことが重なって大暴落に見舞われて、ショートストラドルを保有していたとします。

その倍は大損失を被り、追証が発生します。

追証は自己資金以上の資金を要求されますので、負債を抱えることになる恐れもあります。

現に東日本大震災の時には多くの投資家が安易なオプション売りを行って、大損失を被ったようです。

 

その時のショートストラングルの怖さは、JPXのこちらの動画で確認できます。

本当にまれにしか起きない、多くの人が経験しないようなことを、自分だけは経験することはないと思うかもしれません。

でも、実際に起きた後で「そんなはずはない。ずるい」と言っても後の祭りです。

自動車を運転していて、流れについてスピード超過で走っていたら、自分だけスピード違反で捕まってしまうようなものです。

理不尽だと思えば、警察官に文句の一つでも言いたくなるでしょう。

 

自動車免許の違反による減点や罰金程度ならまだ良いです。

損失限定といえます。(心理的・感情的なマイナスは除く)

 

投資に関して追証が発生する場合には、人生で取り返しがつかないくらいの負債を抱えることがあります。

上記の動画でも、2900万円の含み損を抱えていました。

もっと枚数を多く売っていたら、何億もの損失を抱えることになりかねません。

 

それでいて、得られる利益はオプションを売ったプレミアムのみです。

 

つまり、利益の額が少額なのに対して、損失は立ち直れないくらいに損失が膨らみ、再起不能になる恐れがある点がリスクとリターンのバランスがあっていないのです。

自動車免許のような、減点や罰金なら時間をかければゴールド免許に戻れたりしますし、自己資産を全額失うような罰金はありません。

しかし、投資の損失無限大の怖さは、一度起きたら再起不能になる点です。

これだけは絶対に避けなければいけません。

 

いくら実現確率が低いとはいえ、もし実現したら元に戻れないくらいの損失を被るリスクを取っていることを認識していればまだ自己責任として取引している分にはその人の裁量なのでよいかもしれませんが、安易に売るのだけは絶対に避けたほうがいいでしょう。

4.どうしてもショートストラドルをしたいなら大損失を防ぐ商品で行う

じゃあ、どうすればいいでしょうか。

まずは取引所取引ではなくなりますが、ほぼ24時間動いている商品でヘッジすればいいという考えがあります。

日経225オプションは取引所取引で夜間や休日は約定しないので、証券会社が提供しているCFD商品などを使って、24時間に近い取引で常にヘッジできれば、まだリスクは低くなるでしょう。

ここまでリスクを下げて、しかも24時間張り付きでショートストラドルを行えば、まだ安心感は高いかもしれません。

「でも、安易に売りたいんです!24時間寝ずに番をするなんて嫌です!」

という声が聞こえてきそうです。

じゃあ取引しなければいいだけです。

リスクの引き受けor労働(24時間監視)がないのに、安易に利益を狙おうという考えは虫が良すぎますよね。

そんなに簡単に利益を狙えるのだったら、もうとっくにみんな必ず勝てる、いわゆる「聖杯」にたどり着いているはずなので。

でも現実はそうじゃない。

うまくいかないんです。

都合よくリスクを排除しながら安心に利益を狙うなんて、無理なんです。

そんなリスクリターンの比率が崩れている世界なんて、そうそうあるものじゃありません。

と、夢のない話をずらずらと書きましたが、実は一つだけ、リスクリターンを正常に戻す可能性があります。

それは「聖杯」のような夢のような戦略じゃありません。

リスクリターンを正常の比率に戻して、ほどほどのリターンでほどほどの利益を狙える可能性です。

ショートストラドルは、
ハッキリ言ってリスクとリターンのバランスが悪くて、

  • 勝てばコツコツ利益
  • 負ければ一発退場&追証で再起不能

というハイリターンミドルリスク(ローリスク?)の割に合わない戦略です。

そのショートストラドルを、

  • 勝てばコツコツ利益
  • 負けてもコツコツ損失

というようにリスクとリターンのバランスを調整すれば、まだショートストラドルを組む余地があるのではないでしょうか。

では、負けても一発退場じゃなくて、コツコツ損失程度に抑えるにはどうしたらいいか。

決して安全に、損失無くショートストラドルを出来るわけではありません。

負けたらそれなりの損失を被ります。

上級者戦略だから、損失を限定にするのにも技術がいるし、安全な戦略とは言いません。

もし安全な戦略を構造上実現したいなら、買い玉をそれぞれ追加したコンドルを組んだほうがいいですよね。

それでもショートストラドルにロマンを求める方は、別の商品を使う必要があります。

それが現時点の結論です。

いくら日経225オプションでダイナミックヘッジをして先物ミニで調整しても、取引できない時間帯やサーキットブレーカーなどの不慮の事態は回避することができません。

だから、取引所取引とは別の、損失を構造上食い止める商品を使えば、ショートストラドルの形であっても、大暴落時に一発破たんを防いで取引できる可能性があります。

5.まとめ

ショートストラドルをお勧めはしません。
身を守るためにはやめたほうがいいですが、だからと言って聞く人ばかりじゃないですよね。

証拠金の概要だって、個人投資家は危ないから証拠金を気にするポジションを取るな!という意見もありますが、危ないからこそ証拠金の仕組みを知り、取れるリスクの範囲でコントロールすることが必要じゃないかと思います。

コントロールできない人は扱わないほうがいいのは、その通りです。

でも、それを言ったらオプション取引なんて初心者は絶対無理で市場が広がらないのも事実です。

極論を言えば投資なんて素人はやらないほうが身のためだ。
労働こそが一番安全にお金を得る方法だ!となってしまいかねません。
(極論ですが)

そうならないために「オプションを正しく広める」ためには、証拠金も知っておく必要がある人にお伝えするし、ショートストラドルをのリスクを何とかしたい人には、自己責任であることを理解していただいたうえでリスクをコントロールする方法を伝える。

こうやっていかないと日本人には金融リテラシーはいつまで経っても身に付かないのではないでしょうか。

オプション取引の難しさについては、オプション取引が難しい理由とボラティリティトレードも併せてお読みください。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

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