あなたは2銘柄以上のオプションを使ったポジションの時、売りポジションと買いポジションをそれぞれ別に計算するのが正しいか、全部まとめて計算するのが正しいかご存じでしょうか。
例えばコールの新規売り、買い、プット新規売り、買いの複数のポジションを持っているときに、リスク指標の合計がデルタ-0.18ベガ-36ガンマ-0.0008セータ+14だとします。
この時、セータだけを考えると、オプション価格は満期日までの日数が1日減ると14円上昇します。
売り、買いポジションそれぞれを持っている場合はギリシャ文字をまとめて計算してOKです。
ただしベガだけはギリシャ文字をまとめて計算するよりも限月ごとに計算したほうが正確です。
この記事では売りや買いを別々に計算せずにダイレクトにポジションのリスクを計算できるギリシャ文字についてお伝えします。
オプションの損益計算は複数のポジションを持っているときに有効
リスクパラメータの合計がデルタ-0.18ベガ-36ガンマ-0.0008セータ+14。これがオプション全体の数値とします。
基本的に、オプションを買うとタイムディケイでプレミアムが低下するので、セータはマイナスので、買いポジションは日にちが経つたびに減価していきます。
このポジションはデルタが0に近くセータがプラスなので、ショートストラングやコンドルのようなポジションかと思われます。
セータについては、コールやプットの新規売りのほうがセータが大きいため、全体としてプラスにです。
デルタはほぼフラットで、セータがプラスになのでこのポートフォリオ全体を1日保有すると14円プラスです。
このように、持っているオプションが買いでも売りでも、どんなに複雑にポジションを持っても一つのポートフォリオとして特性が分かるのがリスクパラメータを用いたリスク把握となります。
ただしベガだけは損益を個々に計算する必要がある
ベガについては同限月ならギリシャ文字の数値をまとめてOKですが、異限月の場合は計算は別々としたほうが良いでしょう。
ベガが数日後、-36、IVが5%上昇したとした場合、全体のIVは+5%であっても、個々のIVの変化を見ると異なる場合が多いからです。
そもそもIV指数は現在流通しているオプションをまとめて算出しているので、個々のIVの総合値です。
ですのでIVが5%上昇したとしても、期近と期先のオプションでそれぞれIVがいくら上がったのかを調べる必要があります。
特にカレンダー系のスプレッドの場合は、期近と期先のベガが異なり期先のベガの方が絶対値が大きいので、自分のポジションはベガがプラスになっていても、期近のベガの絶対値が小さく、期先のベガの絶対値が大きくなるので、気を付けなければいけません。
試しにベガがプラスになっているカレンダースプレッドを組んだとします。
期先のベガが大きいため全体ンポジションのベガもプラスになっていますが、このベガが望ましい状態は「期近のIVが反応しないけど、期先のIVだけ上昇する」という珍しい現象で最も利益が出るポジションです。
そのような場面はほとんど起こりませんが全く無いかというと可能性としてはあり得ますので、例えば期近のオプションだけが高騰した場面などでは使い道があると思われます。
カレンダーポジションとしてはこのIVの動きを狙った戦略です。
IVが低下する局面でもベガがプラスのカレンダースプレッドが有効な場合がある
期近のIVが高すぎるため、期近のオプションを売りたい。
そのヘッジとして期先のオプションを買ってヘッジにしたい。
そうするとベガはトータルでプラスとなるが、今回の狙いは期近のオプションのIV減少を狙いたいのでトータルでベガがプラスであってもIV減少を狙っている。そんな戦略を持っているならカレンダースプレッドでベガがプラスだとしても戦略の構想自体は理にかなっていると考えられます。
ベガの事例を除いては、全体のリスクパラメータでは売り買いのポジションがどうであっても1つのポートフォリオとして計算できるようにした数値です。
なので、ベガが-34という場合は、売りだろうが買いだろうが、-34×5%と計算するのではなく、個々の数値を拾っていった方が良いでしょう。
カレンダースプレッドの損益の推移
このように、全体のベガは+11.38だとしても、個別のベガは期近が-32.49、期先が+45.30となっています。
損益推移をを見ると、期近のベガが19.07%から15.13%へ下げたので+134,428円の含み益、期先のベガは16.16%から16.43%に上がったので+12,273円の含み益となっています。
全体のIVとしては18.09%から15.63%と2.46%減少し、このポジション組成時のベガは+11.78であったにもかかわらず、含み損は出ていません。
ギリシャ文字のパラメータを常にチェックしよう
このように、オプションのギリシャ文字は相場の状況によってさまざまに変化しますし、カレンダー系スプレッドについてはベガをそれぞれ別にして計算する必要があります。
Prizeを用いて期近と期先のIVの差が見れます。
この期近IVと期先IVの差が開いているときには、先ほど紹介したカレンダースプレッドを組んで期近のIVの低下を狙いに行くという発想もありかもしれません。
ただし他のギリシャ文字と同様に、相場変動によってベガの数値自体も変化しますので、IVが5%上昇したらこのポジションは変動に従ってベガの値自体も変化することが予想されます。
まとめ
複数のポジションを保有する場合は、リスクパラメータ(=ギリシャ文字)を合算してポジション全体のリスクを把握できます。
ただしカレンダー系スプレッドについては、ベガの値を合算するのではなく個々のポジションで原資産の変動からどの程度IVが変化したのかを捉えるようにしましょう。
カレンダースプレッドについては、カレンダースプレッドで満期間近の損益がブレやすい理由とはも併せてお読みください。