オプション取引は損切りや空売りによる両建てが不要になる株式の保険

あなたは株に保険を掛けられるのはご存じでしょうか?

指数(日経225)オプションのプットオプションが個別株の保険として機能します。

何とかショックとよばれるような大変なときに、一時的に保険を掛ける、という手段を知っていれば、損切りも空売り両建ても不要です。

オプションは怖いもの、危険なものではなく、皆さんの資産を守るためにあるのです。

今回はコロナショックの時の事例で株とオプションの違いを説明します。

満期の清算の仕組みはいたってシンプルなオプション取引

プットオプションは権利行使価格を割り込んだ分の金銭を受け渡す制度

日経225オプションのプットオプションの仕組みをみてみましょう。

複雑に思えるオプション制度ですが、満期における清算の仕組みは非常にシンプルなものです。

プットオプションは、日経平均が自分の選択した株価ライン(この自分で選択した株価ラインのことを権利行使価格といいます)を割り込んでいたら、そのラインと満期の特別な清算価格(SQ値といいます)の差額(の1,000倍)を受け渡すというルールです。

上記の例では、自分が選択した日経平均の株価ライン(権利行使価格)は20,000円ですが、日経平均が下落してその権利行使価格を下回っています。

よって清算価格(SQ値)19,200円との差額800円の受け渡しが行われます(実際には1,000倍の800,000円の受け渡し)。

このようにSQ値が権利行使価格よりも下にあるときにその差額の金銭を受け取れる側をプットオプションの権利者である買い手、差額の金銭を支払わなければならない側がプットオプションの義務者である売り手です。

SQ値が権利行使価格を下回っている場合に権利行使価格とSQ値の差額が受け渡されるということは、日経平均が下落すればするほど(SQ値が低ければ低いほど)、受渡額が増加することを意味します。

プットオプションの買い手としては、日経平均が自分の選んだ権利行使価格を割り込んで下落すれば下落するほど、受け取り額は大きくなります。

しかし一方で権利行使価格を割り込まなかったとしても、受け渡しが行われない=受取が0となるだけで、損失が無限に膨らむわけではありません。

まさに相場の下落に対する掛け捨て保険のような機能が期待できます。

売り手(保険者)は、万が一大きく下落したら、保険金を支払う義務がありますので、買い手から引き受け保険料を受け取ることができます。

プットオプションの買い手はいくらかの保険料を支払って相場の大きな下落からの自己の資産の損失をプットオプションの売り手に引き受けさせているわけです。

売り手は保険会社のような立場に立ち、保険金を支払えるだけの資産用意し、保険料(オプション価格)の妥当な設定のために統計、金融工学を駆使し、ヘッジ、再保険等もかけながら、保険事業さながら利益を追求するわけです。

プットオプションの値動きと株の空売りの値動きの違い

プットオプションならば相場が下げたら損切りしたのと同じ効果、相場が上がれば何もせずしてその上昇益に与れます。

コロナショックのような相場展開とそのときの心理状態は、個人投資家の皆さんもご経験があるのではないでしょうか。

損切りできていれば素晴らしい判断ですが、その後の上昇の展開で相場についていくのはなかなか難しいのではないかと思います。

このようなときオプションを使えるとどうなるのでしょうか。

プットオプションの保険効果

使うのはプットオプションです。

2月に入り、新型コロナウイルスの話で相場は不安定要素が増している中で、2月21日の夜間、欧州、米国市場が暴落します。

帰ってきた火曜日にある会社の株が40,000円を割り込んでしまったその日(当日の日経平均の終値は22,605.41円でした)、日経225オプションのプットオプションを買ったとします。

4月10日満期のプット18250(P18250)という商品を1枚だけ買います。

2月25日の終値は48円でした。

なお、日経225オプションでは取引単位は1,000倍ですので、実際に支払うのは48,000円です。

これで、株がおおむね36,000円を割り込む展開になっても、このプットオプション(P18250)の利益でN社株の含み損をカバーしてくれる可能性があります。

この図は、N社株の損益の出方(赤いグラフ)とP18250の満期における損益の出方(青いグラフ)を模式的に表したグラフです。

縦軸は損益を表し、グラフの上方は利益、下方は損失です。

横軸は日経平均の水準です。

真ん中の薄い緑の縦の線が現在の地点であり、グラフ右側は日経平均の上昇、左側は日経平均の下落です。

ここではN社株の水準を日経平均の水準に変換して損益を表示しています。

つまり日経平均において18,250円を割り込む水準が、N社株でいうところの36,000円を割り込む水準だと考えてください。

N社株が36,000円を割り込んで(=日経平均が18,250円を割り込んで)、損失がどんどん赤線のように膨らんでも、P18250からは逆に利益が増えていく青線に従うことがわかります。

N社株がいくら下げてもそれを補って余りある利益がP18250から出ることがわかります。

注目すべきは、むしろ逆に相場が上昇した場合です。図の右方向に進んだ場合です。

上昇してもこのP18250は損失が一定(最大損失48,000円)であるためN社株の上昇の利益を邪魔しません。

つまり、下落した場合は、このP18250が株の損失をしっかりとカバーし(いやむしろ株の損失を上回る利益になり)、上昇した場合は、最初に支払った48,000円を上限としてコストはそれ以上にはならないので、株価の上昇益を享受できます。

下落方向はしっかりとカバーしてくれて、上昇すればその上昇益もちゃんともらえるというわけです。

損切りしていた場合との差が顕著に表れる

同じ状況で、損切りしていた場合と比べてみましょう。

損切りしていたら、確かに下落の損失は損切時点以上には膨らんではいませんが、その後の上昇にはついていけるかはわかりませんので、上昇益をとれていない可能性があります。

これは空売りした場合も同じです。

空売りしていた場合、その空売りを外すのは、新たなエントリーと同じ。

エントリーするタイミングが難しいのと同様、空売りを外すのは難しいのです。

コロナショックにおける損切とオプションの違い

記憶に新しいコロナショックの場面で、株を損切りした場合とオプションを利用した場合の違いをみてみましょう。

株取引で保険を掛けられない状況

個人投資家の気持ちを想像しながら図表1のチャートを見ていきます。

N社の株価はあがるだろうと思い、N社株を1株40,000円のときに100株買うことにしました(①)。
400万円の投資です。

予想通り年末にかけて上昇しましたので保有している株の時価総額は470万円にまで増加しました(②)。

わずか2ヶ月とちょっとで約18%増です。

その後、年末から年始にかけて多少押されたものの、42,000円台を維持できていましたのでひとまず様子見です(③)。

ところが2月に入って40,000円を割り込みます。2月25日、連休明け一気に36,000円を伺う展開に(④)。

エントリーから-10%、自身が保有してからの高値からは-23%ですからもはや心は平穏ではいられそうにありません。

3月上旬にかけて38,000円に戻す展開でほっとしつつも、新型コロナウイルスの世界的な感染状況を見ると、これはまずいのではないかと恐怖を覚えます。

一旦止まった36,000円を割り込んだらこれはどこまで下がるかはわからない。

36,000円という水準は、エントリーから-10%水準。

一時的にではあるにせよ最高値47,000円のときの資産額からは100万円以上目減りしている水準です。

36,000円で耐えてくれないかと祈りたくなる状況です。

しかし、あえなく3月9日には36,000円を割り込んでしまいました(⑤)。

コロナショックだでどこまで下落するのか予想ができず、平常心ではいられないでしょう。

35,000円で下落の恐怖に何も考えられず、パニック的に損切り。

50万円の損失が確定してしまいました。

このとき、一時的にせよ、一番資産が増えていた場面からは120万円の資産の目減りです。

ただ、翌日も下がり、3月13日には31,880円をタッチ(⑥)。

このときまだ株を持っていたら、一時含み損は81万2千円にもなっていたわけで、損切りで資産を12.5%ほど失いましたが、このコロナショックでもこれだけの損失で済んで良かったとほっとしていました。

その後も不安定な状況は続いていましたし、ショックから立ち直れていませんでしたので、戻り相場についていく勇気も気力もありません。

そうこうするうちに40,000円を回復してしまいます(⑦)。

世間では二番底が来ると言言われているので、36,000円まで押したら買おうと決めます。
しかし、36,000円に戻ることはありませんでした。

そして4月16日、コロナショック前の高値47,000円に戻りました。(⑧)

プットで保険を掛けられれば損失を減らせる理由

コロナショック時、大底で4月限P18250の含み益は200万円を超えていたのに、その後の株価急上昇からの利益を邪魔しないプットオプション保険としての機能として活用できます。

実際に冒頭のコロナショックのときのP18250がどのような価格になったのかが下の表です。

コロナショック時のN社株の大底は3月13日(金)でしたが、その日のP18250の終値は2,245円でした。

48,000円で買ったものが2,245,000円になった計算です。

含み益は約220万円です。

この時点でN社株のエントリーからの含み損は約80万円程度(株価チャートの⑥の場面)でしたから、その含み損を補って余りある利益がこのP18250から出ています。

先に見た損益グラフによれば、さらなる大きな下落でもプットオプションが効いていますし、余りある含み益でひとまず安心です。

その後はこの日を大底に反転、4月限のオプションの満期のころには、N社株は43,000円、4月16日(⑧)には47,000円を回復しました。

SQ値は19,577円でしたのでP18250の権利は消滅し、支払った48,000円を失うことにはなりましたが、N社株を手放しているわけではありませんので、その後のN社株の上昇益はしっかりと手にできています。

このように、株価が下落したままであれば、プットオプションの利益により株価の下落分をカバーでき、株価が上昇したならば、損切り、空売りの場合と異なり、再度エントリーするタイミングを計る必要もなくそのままほったらかしで上昇益を手にすることが出来るのがオプションです。

まとめ

今回は指数(日経225)オプションのプットオプションが個別株の保険として機能します。

いわゆる何とかショックとよばれるような大変なときに、一時的に保険を掛ける、という手段を知っていれば、損切りも空売り両建ても不要です。

オプションは怖いもの、危険なものではなく、皆さんの資産を守るためにあるのです。

プットオプションを買って保険にする事例として、ベータ値で東日本大震災でも損失を食い止めたオプション保険術も併せてお読みください。

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