ロングストラドルで利益が出た時のデルタヘッジ対処法

投稿者名:金守 遼太

アメリカ大統領選挙は、トランプ氏かバイデン氏か、どちらが勝つか分からない状態でした。

オプションを使えば相場の方向性に関係なく利益を出せる可能性があります。

その時に有効なのが、コールとプットを両方買うロングストラドルです。

11月2日にエントリーしていたら、SQでは136万円の利益が出ていた計算です。

ただしSQまで保有するのは難しい場合もあります。

それは含み益が十分に出ていると、今度は相場が元に戻ってしまったときの損失が怖いから、最終日まで引っ張らずに途中で利食いしたくなりやすいからです。

シミュレーションでは、SQまで保有していた場合の損益結果が簡単に得られます。

しかしながら、SQまで保有しておくには全く相場を見ずに、自分のポジションも気にしない胆力が必要です。

この記事では、アメリカ大統領選を振り返って、ロングストラドルの難しさとデルタヘッジによる利益の固定について解説します。

下落側はプットオプション、上昇側はコールオプション

上がっても下がってもいいポジションはオプション取引は損切りや空売りによる両建てが不要になる株式の保険でみたプットオプションとコールオプションを両方買うことで出来上がります。

コールオプションの損益について確認

満期の清算の仕組みはいたってシンプルなオプション取引

日経225コールオプションは権利行使価格を超えた分の金銭を受け渡す制度です。

まず日経225オプションのコールオプションの仕組みをみてみましょう。

複雑に思えるオプション制度ですが、満期における清算の仕組みは非常にシンプルなものです。

コールオプションについていえば、日経平均が自分の選択した株価ライン(権利行使価格)を超えていたら、そのラインと満期の特別な清算価格(SQ値)の差額(の1,000倍)を受け渡すというルールです。

コールオプションのイメージ

上記の例では、自分が選択した日経平均の株価ライン(権利行使価格)は24,000円ですが、日経平均が上昇してその権利行使価格を超えています。

したがって清算価格(SQ値)24,500円との差額500円の受け渡しが行われます(実際には1,000倍の500,000円の受け渡し)。

このようにSQ値が権利行使価格よりも上にあるときにその差額の金銭を受け取れる側をコールオプションの権利者(コールオプションの買い手)であり、差額の金銭を支払わなければならない側がコールオプションの義務者(コールオプションの売り手)です。

SQ値が権利行使価格を上回っている場合に権利行使価格とSQ値の差額が受け渡されるということは、日経平均が上昇すればするほど(SQ値が高ければ高いほど)、受渡額が増加することを意味します。

コールオプションの受け渡し額イメージ

コールオプションの買い手としては、日経平均が自分の選んだ権利行使価格を超えて上昇すればするほど、受け取り額は大きくなります。

一方で、権利行使価格を超えなかったとしても(相場が下落してしまっても)、受け渡しが行われない=受取が0となるだけで、損失が無限に膨らむわけではありません。

C23250を1枚買った場合にどのような損益となるのかを見てみましょう。

コールオプション買い1枚(C23250)のSQ損益図(青)と日経225先物買い1枚の損益図(赤)です。

青いラインはC23250(権利行使価格が23,250円のコールオプション)の満期損益図です。

日経225先物1枚(日経225mini10枚に相当)買いの損益グラフ(赤のライン)と比べると、C23250は上昇方向(右方向)については同じ傾き(損益の出方が同じ=最初に支払う分がコストとなるためにグラフが右にずれている)であるのに対し、下落方向に対しては損失限定(一定)であることがわかります。

つまり損益分岐点を超えて上昇すればするほど利益が増えますが(先物1枚=mini10枚と同じスピードで利益が増えます)、下落しても損益グラフが折れ曲がり、損失がそれ以上増えません(損失限定)。相場が上昇すればするほど利益が増えますが、逆に下落しても損失は一定額でとどまるということです。

プットオプションの損益について確認

プットオプション買い1枚(P23250)のSQ損益図(青)と日経225先物売り1枚の損益図(赤)です。

青いラインがP23250(権利行使価格が23,500円のプットオプション)の満期における損益グラフです。

日経225先物1枚(日経225mini10枚に相当)売りの損益グラフ(赤のライン)と比べると、P23250は下落方向(左方向)については同じ傾き(=損益の出方が同じ=最初に支払う分がコストとなるためにグラフが左にずれている)であるのに対し、上昇方向に対しては損失限定(一定)であることがわかります。

つまり損益分岐点を割り込んで下落すればするほど利益が増えますが(先物1枚=mini10枚と同じスピードで利益が増えます)、上昇しても損益グラフが折れ曲がり、損失がそれ以上増えません(損失限定)。相場が下落すればするほど利益が増えますが、逆に上昇しても損失は一定額にとどまるということです。

ロングストラドルの姿

ここで、日経平均の下落で利益無限大、上昇で損失限定のプットオプションと、日経平均の上昇で利益無限大、下落で損失限定のコールオプションを合成してみましょう。

P23250買い1枚(青)とC23250買い1枚(黒)のSQ損益図を重ねた図です。

日経平均が上昇すると(右方向)コールオプションは右肩上がりで利益が増えていきます(黒)。

一方どんなに相場が上昇してもプットオプションは損失が一定で増えません(青)。

コールオプションの利益がプットオプションの損失を上回り始めると全体としては利益が出始めることになります。

一方、日経平均が下落すればするほどプットオプションは利益が増えていきます(青)。

一方どんなに相場が崩れてもコールオプションは損失が一定で増えません(黒)。

プットオプションの利益がコールオプションの損失を上回り始めると全体としては利益が出始めることになります。

損益を通算して合成するとこのようなグラフが描けます。

ストラドルは方向に関係なく相場が動くか動かないかを予想する

損益グラフは縦軸が損益、横軸が日経平均株価の水準です。

中央の薄い緑色のラインが、2020年11月2日大引け時点の日経225miniの水準28,280円です。

日経平均株価が上昇しても下落しても、損益分岐点をクリアできる程度の株価の変動があれば利益になることが見て取れます。

結果的に、相場が大きく上昇しましたので、このポジションからは1,360,000円の利益です。

このようにオプションを利用することで、相場の方向性を問わず、相場が大きく動くかどうかという視点で相場に立ち向かうことが可能になります。

P23250買い1枚とC23250買い1枚のSQ損益合成図です。

このように同じ権利行使価格のコールオプションとプットオプションを両方買う方法は、「ロングストラドル」と呼ばれています。

このポジションは、上がっても下がっても最初に支払ったオプションプレミアム(オプション価格のこと)を上回るだけの上昇、または下落があれば利益、動かなければ損失になります。

今回の例でいえば、C23250が450円(実際に支払うのは1,000倍の45万円)、P23250が420円(実際に支払うのは1,000倍の42万円)でした。

支払合計は870円(実際に支払うのは87万円)ですから、権利行使価格23,250円から上下870円の変動があれば満期清算で870円以上を受け取れますので、当初の支払い額を上回り、最終的には利益になります(上は24,120円、下は22,380円が損益分岐点)。

もし満期において23,250円ピタリだった場合、満期清算での受け取りが0円となりますので、当初支払った87万円が損失となります(最大損失額)。

ロングストラドルの狙いは相場が動くか動かないかのリスク

結局、このポジションは、相場が上がるか下がるかというリスクをとるのではなく、相場が動くか動かないかのリスクをとっていることになります。

方向は問わないが、大きく動けば勝ち、動かなければ負けということです。

今回のアメリカ大統領選挙のようなイベントで、相場が上がるか下がるかはわからないが、相場は大きく動くはずだという相場観を反映させることができるというわけです。

オプションを使うことで、上がるか下がるかという相場観とは異なる、動くか動かないかという相場観を反映させることが可能です。

満期まで持たないならばギリシャ文字は避けては通れない

このように相場が大きく動いたため成功したロングストラドルですが、途中の動きも見てみましょう。

途中で利益がでたら反対売買して利食いしてもいいし、全く動かなければ損切りも必要です。満期においては最大87万円を失う可能性のあるポジションですから、満期まで引っ張るのではなく途中で利食い、撤退も考えておく必要があります。

そうなると期中のオプション価格の評価を避けては通れなくなります。

P23250買い1枚とC23250買い1枚の期中・SQ損益合成図です。

青のSQ損益図は直線的でわかりやすいのですが、期中にどのような価格変化をするのかは、一筋縄ではいきません。

この予想図はこのブラックショールズモデルによりオプション価格を評価して描画されています。

ポジション組成日のこのオプションポジションの損益の出方(緑)はカーブを描いています。

また、7日後にはじわじわと青のグラフにサヤ寄せするように、現在の水準付近は損失が出ています(黄)。

満期勝負ではなく、期中で反対売買するつもりなのであれば、この青に近づくような動き(目減り=損失)が1日あたりどれぐらいなのか、期中において、相場の変動でどれぐらいの利益になるのか、目減り分を取り返すにはどれぐらいの相場変動が必要か、といったことを知る必要があるわけで、これを知るためのパラメータ(指標)がいわゆるギリシャ文字とよばれるものです。

SQまでの価格推移を見てみましょう。

一気に136万円を得られるのではなく、建てた11月2日の後、次の日は15,000円その次の日は121,000円と徐々に利益が出ていることが分かります。

最終日まで待てば最大利益ですが、果たしてここまで引っ張ることができたでしょうか。

利食い千人力と言って、どこで利食いするかはとても難しい選択です。

また、この時のリスクカーブを見てみると相場が動いて赤色の日経平均先物の価格がもともといた緑の線からずれているのが分かります。

日経平均は前日比で+465円です。

さらにその次のにはより日経平均株価が上昇したために、赤い線(日経平均株価)がさらに右にずれています。

エントリーした当日に予想されるカーブは黄色なので、実際の赤い線は黄色よりも深くなっていますが、それを補って余りあるくらい日経平均が上昇したことが分かります。(エントリー日から855円上昇)

さらに次の日です。

日経平均がエントリーから1,070円上昇して、赤色のリスクカーブがだんだんSQラインの青い線に近づいています。

青い線はデルタ1.0の日経平均先物と同じラインです。

さらに次の日になると完全に青いラインと一致しています。

青のSQラインの値動きはデルタ1.0の先物の値動きと一緒

青い線に従って動くようになると、デルタ1.0であることを示しています。

つまり先物ロングポジション1枚と同等です。

相場がこれから上昇すれば大きな利益になりますが、下落したら先物ロングポジション1枚の下落スピードになるため、日経平均株価によって大きく左右されるポジションです。

SQまでにはまだ日数があるのですが、このままこのポジションを保有しておくにはリスク(相場の変動による結果のブレ)が高いので手を打ちたくなるのではないでしょうか。

例えばここまで上昇したら上昇益を利食いするために先物ミニを当ててデルタヘッジをすれば、761,000円の利益を固定することで次の手が生まれます。

このように、リスクが高まったらリスクを緩和するほうにポジション調整する技術あれば、今回のような含み益を固定しておく戦略も有効です。

SQの利益は136万円ですが、そのSQまで引っ張ることができたか(上記のポジションで1週間待てるか)を考えると、ある程度のところで利食いしたくなるときに有効なのがデルタヘッジです。

仮にデルタヘッジをした場合は利益が少なくなるが安心感が出る

例えば、11月9日の時点でデルタヘッジをしてみます。

デルタはほとんど1.0に近いので、先物ミニを9枚ショートします。その時のリスクカーブです。

赤の実践を上記と比較してみればわかりますが、24,865円付近からロングストラドルの損益カーブが新しく作られ、上昇しても下落しても利益が出るポジションを作ることができています。

このように一部利食いしたことで、SQ損益は最低でおよそ60万円は確保できたことになります。

仮にエントリーした23,280円に急落した場合には、赤い実践に従うので100万を超える利益が出たことが分かります。

その時の損益推移です。

何もしなければ136万の利益だったポジションが、結局は80万円に目減りしたので、本来ならミニを入れなければよかったという結果ですが、その結果を予測することは困難なので、リスクを小さくするためにギリシャ文字を見ながらヘッジしていく技術もあると安心感があります。

このようにギリシャ文字を見てポジション調整すれば、利食いしつつ変動にも強くなりますので、ロングストラドルで利益が十分出た時に仕掛ける新たな戦略として覚えておくのも良いでしょう。

まとめ

相場の方向性を取らない戦略としてロングストラドルがありますが、大きく動くとデルタが1.0に近づくので先物と同じ値動きになってしまいます。

それを解消するのがデルタヘッジです。

今回の事例では何もしないでSQを迎えるのが136万円と最も結果が良かったですが、SQまで引っ張らずに途中で一部利食いしてさらに変動に備えることもできます。

その場合は一部利食いするのでリスクが下がり、最大利益が80万円程度に下がる結果となりました。

利食いをいつするのかについては答えがなく難しいですが、SQ戦略だけではなく、ギリシャ文字を見てリスク分析して最良の場面でデルタヘッジするのか利食いするのかポジションを閉るのかを考えられと、オプション取引の戦略の幅も広がるでしょう。

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