イギリス国民投票の波乱時における日経VI先物の値動きの意外性

投稿者名:金森 雅人

6月24日に結果が公表されたイギリス国民投票は離脱派が過半数を取り、日経平均株価は昼に-1000円を越す下落に見舞われました。

当初の予想ではどちらになるかわからないのですが、たいていは残留することになるという意識が働いていた結果、予想を裏切る形で日経平均株価が下落してインプライドボラティリティも上昇しました。

ここではボラティリティの観点からこのイベントについて考察していきます。

暴落時の日経VI指数

-1000円を越す暴落と言っても良い下落が起きても、日経VI指数は前日比5ポイント程度の上昇にとどまりました。
つまり前日までに充分不確実性を織り込んでいたということが分かります。

もし大方の予想が残留で、急遽離脱のニュースが出た場合には、日経VI指数は20から40に急騰していたでしょが、今回はジリジリとボラティリティを上げて市場参加者の不安を反映する形で、最終的に離脱の結果がでました。

今回はインプライドボラティリティが上昇しましたが、すでに認知されているイベントは経過しました。
こうなってしまうと不安が取り除かれたので、次第にボラティリティは下げていく傾向になります。

東日本大震災の事例

実は東日本大震災の時にもボラティリティは高騰しましたが、地震自体では日経平均株価も日経VI指数もそれほど変動はしなかったのですが、原発問題が明らかになって日経平均株価が暴落し、ボラティリティが上昇しました。

このように大震災という予期しないことがあって、さらに原発という予期しないことが起きたために市場がびっくりしてVI指数が反応したと解釈できます。

日経VI先物と日経VI指数の関連性

実は今回の事例では、日経VI指数は40ポイントを超えましたが、日経VI先物は期近が32ポイント、期先が32ポイントと追従しきれていません。

これは先物の特徴で、満期において上ったボラティリティは下がるという思惑が働くからです。
今は確かに高くなっているけど、満期まで時間があれば十分下がってくるだろう。
そう思っているひとが多いから先物が上昇しない原因となります。

暴落時には期近の先物のほうが価格が高くなり、期先の先物のほうが高くなりきらない現象を起こしており、この現象をバックワーデーションと呼びます。

そして飛び抜けた指数が元に戻る際には、今度また指数のほうが先に価格を下げて、後から追従して先物価格が下がっていくと考えられます。
つまりボラティリティ先物は「先行」しているのではなく、遅行しているのです。
常に指数のほうが市場の変動を大きく拾って、期先になればなるほど反応が鈍い。このような性質があります。

日経VI指数はなかなか下がらない

これほど急激にボラティリティが上昇すると、ある日ストンと日経VI指数が下がります。
もし週末に欧米各国の救済や何かしらの不安要素が取り除かれる事態があれば、週明けの日経VI指数は下がったことでしょう。

今回はそのような救済などが特に無かったので、数日を掛けて下落していっています。

ですが、指数が下落しても、先物は遅行しているためゆっくりと下落する傾向があります。

実は盛ったボラティリティを売って利益を狙うのも、時間との戦いになります。
指数が下がっていても、先物はまだ下がらないでそのままSQを迎えると、将来は利益が出るはずなのに泣く泣くロスカットする羽目に会うかもしれません。
それが建てた日経VI先物の満期日にロールオーバーしないといけないので、管理する手間が生じます。
そうならないように期中に決済するか、期末のSQ日に決済してロールオーバーの準備をしないといけません。

これが日経VI先物の取引の注意点となります。

まとめ

盛ったボラティリティを売るには日経VI先物を利用するのが一番直接的にボラティリティを売れるのですが、このようにVI指数が低下するのはゆっくりと低下するため、先物の特性である満期が課題になります。

充分に満期まで余裕がある先物を利用するか、ロールオーバーを念頭に取引を心がけましょう。

また、この日経VI指数を用いた、日経平均VIを投資判断に役立てることが可能な理由も併せてお読みください。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

関連記事

   オプション取引に関する無料メルマガを購読できます    登録はこちら
TOP
TOP