オプション投資を始めると、値洗いと呼ばれる毎日の評価損益を注視し管理することになります。
日々の損益が、自身の持っているポジションのリスクパラメータに対してどのような値動きをしているかを評価するためです。
実はITM(インザマネー)のオプションの評価損益が、先物よりも上回ることが可能性としてあります。
この事実を知っておけば、自身のポートフォリオからの損益を把握することができ、慌ててロスカットをセずにきちんと対処することが出来ます。
ガンマリスクの考慮
ガンマは、デルタの変化を表します。
一方でデルタは、原資産の変化と同じ1に近づいた時点で増大は止る、即ち1以上のデルタは無い特性を有しています。
このことより、デルタが1に近づいた時点でガンマはもはや大きくはならないのか、それともガンマだけは原資産の変化により更に大きくなっていくのかを知る必要があります。
このことを理解していないと、ショートポジションの場合、ガンマにより原資産以上の損失もあり得るのかどうかが判断できないからです。
この疑問については、ガンマはデルタの変動率であることから、ITM(インザマネー)やOTM(アウトオブザマネー)になれば小さくなっていく性質を持ちます。
ATM(アットザマネー)がガンマが最大になるポイントです。最終的に0にはなりませんが、限りなく0に近くなります。
ただ、数値上は0に近いですが、あまりにD-ITM(ディープインザマネー)やF-OTM(ファーアウトオブザマネー)になるとリスク指標に出ない(理論的ではない)値動きになることもあります。
特にIVが異常に高い時には、理論値以上の価格が付いていることもあります。
オプションは理論上先物以上に損は出ない
オプションは基本的に先物以上の損失は起きません。
なぜなら先物のデルタ1を、他のガンマ・セータ・ベガに振り分けているからになります。
先物のデルタで固定したリスクが他のところに分散されているので、最大で動いたとして、原則は先物と同一価格となります。
例外
IVが上がるプレミアムがついている場合は、値洗いベースでみると先物よりも含み損が出ることはあります。
IVとは市場参加者の思惑を数値化した指標なので、仮に原資産価格以上に相場急変が起こると市場参加者が予測していれば、その思惑を反映して先物以上の値動きを見せることもあります。
ただしD-ITM(ディープインザマネー)になっている場合は、時間的価値が少なくなり本質的価値のみとなりますので、徐々に乖離が解消されて実体(先物価格)近づいていくことになります。
ギリシャ文字の理解が必須
このような特性はギリシャ文字(リスクパラメータ)を理解することで全体像が明らかになります。
簡単に4つの指標について触れていきます。先物に対して、オプションは4つの指標によりコントロールされているのです。
デルタ
デルタのプラスマイナスは、
- コールを買って日経平均が上がるとプレミアムが上昇する
- プットを買って日経平均が下がるプレミアムが上昇する
と覚えてください。
そうすると、
- コール買いはデルタプラス
- コール売りはデルタマイナス
- プット買いはデルタマイナス
- プット売りはデルタプラス
となります。
デルタは原資産に対するプレミアムの変化の割合を示しており、デルタが0.2のポジションなら、原資産が+100動いたときにオプションのプレミアムはは0増加し、原資産が-40動いたら8減ります。
デルタの値はそのオプションがSQ時にITMとなる確率と同じになります。
ガンマ
ガンマは日経平均の変動の大きさを表した数値です。
日経平均が上がるか下がるかにかかわらず、動くのを期待するポジションはガンマプラス、動かないのを期待するのはガンママイナスです。
コールの買いでもプットの買いでも、ポジションが動くと利益が見込めるので符号はプラスになります。
コールの買いで日経平均が下がると損失の方向に行くためマイナスと思われがちですが、それはデルタの考え方です。
ガンマは大きさのみです。
ITMからOTMになるにしたがってデルタの変化は収まる傾向にあるので、ガンマプラスです。
そしてガンマは次の計算式が成り立ちます。
- デルタ =日経平均の変動×ガンマ
- プレミアム =日経平均×デルタ+日経平均^2×ガンマ÷2
例えば、
日経平均 9,500⇒9,730円(+230円)
デルタ -2
ガンマ -15
というように、日経平均が230円上昇した場合は、
デルタ =-2+2.3×-15=-36.5
プレミアム増減 =2.3×(-2)+2.3^2×(-15)/2 =-4.6-39.7 =-44.3
つまりデルタが-2⇒-36.5へマイナス方向に傾き、プレミアムが-44.3悪化したということです。
よく初心者は大きなガンマでやられることが多いのはこの計算式のように変動の二乗で効いてくるからです。
特にF-OTM(ファーアウトオブザマネー:権利行使価格が現在の原資産価格よりかなり離れたオプション)は安全だと思って売りまくることは危険です。
「んとなくITMにならないだろうという甘い見込みでガンマを軽視するのは非常に危険です。
ガティブガンマが大きいポジション相場が動いたときの値洗いの悪化がとてつもなく速ため、避けるのが賢明です。
セータ
セータはポジションの1日当たりのタイムディケイ、1日当たりにどのくらい時間価値が無くなるかを表した値です。
買いポジションを持つとタイムディケイで目減りしてしまうので、コールでもプットでも買ったらプラスです。
セータはガンマほど難しく考えなくても理解しやすいと思います。
しかしガンマとセータは連動しています。
大きいガンマの場合は大きいセータになります。
つまりオプションは市場の変動とタイムディケイの二律背反だということになります。
原資産の変動が有利であれば(ガンマがプラス)、時間の経過は不利になります。(セータがマイナス)
セータはSQ近くになると理論値とずれていきます。
満期直前のOTMをみるとタイムディケイは増えるから、セータの値も絶対値では増えるはずです。
けど、どう計算してもSQ前にプレミアムが0になることがあります。
これは
- セータの計算が間違えている
- ミスプライスで理論と離れた価格が付けられている
おそらく2のほうが多いです。それを把握した上でトレードすべきです。
カレンダースプレッドや、SQ放棄狙いのショートストラングルを組んだときには特に注意が必要です。
リスク指標(セータ)を見ながらトレードすると、思ったほど値洗いが向上しないことがあるのもこれが理由です。
ベガ
市場参加者の期待値を表したボラティリティの数値1%ごとにオプションプレミアムが変化する割合です。
ベガの符号については、IVが上昇するとプレミアムが増えるので、コールでもプットでも買えばプラスです。
トレードに使うのは主にIVです。
IVの変化に対するプレミアムの変化を表しているのがベガになります。
HV(ヒストリカルボラティリティ)はあまり考慮されません。
なぜなら未来は過去の株価と明確な関連性は無いからです。
本当に関連が無いのではなく、オプションプレミアム算出のベースとなるブラック・ショールズモデルの考え方が、過去の株価と未来の株価は関連が無いランダムウォークとして考えているからです。
長い目で見ればHVを考慮しておけばよかったなと思うことはありますが、統計学を用いているオプショントレードでは主にIVを見るべきです。
4つのリスクパラメータの符号
4つの指標を符号の覚え方と一緒に紹介してきましたが、プラスマイナスは必ず覚える必要があります。
<コール買い>
デルタ ガンマ セータ ベガ
+ + - +
<プット買い>
デルタ ガンマ セータ ベガ
- + - +
デルタはコールとプットで符号が逆転し、ガンマ、セータ、ベガはコールでもプットでも同じです。
そして売りの場合は、符号が全て反転します。
<コール買い>
デルタ ガンマ セータ ベガ
- - + -
<プット買い>
デルタ ガンマ セータ ベガ
+ - + -
こうやって<コール買い>さえ覚えておけば、その差異を理解していくだけでも他のポジションも覚えやることができます。
ここでつまづく人が多く、オプションの最大の壁かもしれませんが、必ず必要な知識です。
まとめ
4つのギリシャ文字(リスクパラメータ)を理解することが、オプションの原理原則を知るための最短の道である。
オプション取引で利益を上げるには、オプション取引が難しい理由とボラティリティトレードも参考にしてください。