あなたは、コールを売るときに単純に日経平均株価と権利行使価格の幅だけで決めてませんか?
例えば「1,000円離しておけば大丈夫だろう」というように、その幅でコールを売る位置を決めていると思わぬ上昇の際に大きな損失を被ります。
オプション取引をするなら、幅以外の指標を考えましょう。
その一つが、「到達確率」を考えたコール売りです。
この記事では幅で考えたコール売りと到達確率で考えたコール売りの損失の違いについて解説していきます。
幅で決めたコール売り戦略では-22万円の損失
コールオプションを売る戦略は、コールオプションの損益グラフを見てもわかるように、日経平均株価の上昇に弱いポジションです。
ですが、相場は下落するのは早いけど上昇するのはゆっくりと時間をかけて上昇することから、コール売りは根強い人気があります。
コールを売る戦略は、最も不利な状況は相場が連騰したときです。
最近では菅総理退任のタイミングで連騰していたので、この場面で検証してみましょう。
菅氏不出馬で株価なぜ31年ぶり高値 総裁選、市場関係者の注目点(引用:朝日新聞デジタル)
1,000円の幅でコールを売っていた場合
現在の株価が28,000円付近にいるときに、「1,000円離しておけば大丈夫だろう」と考えて、権利行使価格29,000円のコールオプションを115円で売ったとします。
もし1,000円も上昇しなければ、115円×1,000倍の11万5千円が利益となるポジションです。
ですが、菅総理退任の報道を受けて、日経平均株価はみるみる上昇していきました。
その時の損益推移は下記のようになりました。
満期の1週間前の9月3日には-22万円の損失となりました。
日経平均株価が、売っているオプションの権利行使価格に到達してしまったため、さすがにこれ以上はリスクは取れないので損切をすることになるでしょう。
日経平均株価が1万円の時代には1,000円離すコール売り戦略が有効だったかもしれませんが、日経平均株価が3万円に近い水準まであるときに、1万円時代と同じように1,000円離す戦略ではこのように大きな損失が出る危険性があります。
権利行使価格を5%の到達確率で考えて-10万円で収まった
このようなコール売り戦略をする場合には、例えば5%の到達確率のオプションを売ることを考えてみましょう。
この到達確率は変動するので、その変動の仕方も把握し、到達確率をコントロールするのです。
ですので、先ほど見た1,000円離す戦略のように相場の変動でも何もしないで見ているだけではなくて、到達確率がずれるたびにポジションを建て直すのです。
このように到達確率によってポジションを調整した戦略の結果は-10万円の損失でした。
何もしないでただ保有しただけの時は-22万円でしたが、到達確率を常に5%になるように調整したおかげで、-10万円で収まっています。
ポジション調整タイミングを算出する方法はリスクパラメータ分析
では到達確率5%を維持しつつポジション調整するタイミングを割り出すにはどうしたらいいでしょうか。
それがリスクパラメータにて算出する方法です。
保有しているポジションのリスクパラメータを用いて、日経平均株価の変動がどのくらい起きたら到達率がどの程度変化するのかを割り出せば、相場変動に慌てずに調整することができます。
また、到達確率は、時間によっても低下していきます。
なぜなら、日数が経過すれば、将来到達するであろう距離が徐々に縮まってくるからです。
このように、リスクパラメータを用いたり日数が経過することを考慮しながら、到達確率を常に5%になるように維持しながらポジション調整することで、大きな損失から身を守ることができます。
なお、厳密には1,000円を常に維持する作戦もあります。
例えば500円近づいたら1,000円外に逃がし、下がれば内側に押しこむていうやり方でも悪くはないでしょう。
ただ、ボラティリティが低いときは1,000円離したらプレミアムが低すぎて利益が取れないし、時の経過で1,000円離したらこれもまたプレミアムを取れなくなるため、これではあまり合理的ではありません。
ボラティリティと残存日数を考慮した到達確率を用いた方が合理的だと思いませんか?
まとめ
オプションの売りはコールであっても非常にリスクが高い・高度な取引です。簡単にできるものではありません。
オプションをしっかり学んで取り組むべきものです。
リスク指標を不断に分析し、到達確率を考慮、さらには、その到達確率の変化の仕方も把握して初めてとれる戦略です。
そうしてようやく、大きな損失を回避することができる可能性があるのです。
1,000円上の権利行使価格を売るだけだったら-22万円の損失であった相場でも、到達確率を見ながらポジション調整することで-10万円で収まりました。
オプショントレード普及協会では、到達確率の他に、その変動の仕方も考慮しながら戦略を組み立てていく考え方をレクチャーしています。
この記事を読んで、オプション売りはまだ怖いと思う方は、オプション取引の学習に役立つ、5つの取引条件を満たすオプション戦略も紹介していますので併せてお読みください。