デビットスプレッドが証拠金不要で組める理由とは

投稿者名:金森 雅人

デビットスプレッドはオプションの買いポジションと売りポジションの組み合わせです。

あなたは、オプション売りを保有していると、たとえデビットスプレッドのような組み合わせポジションだとしても証拠金がかかると思っていませんか?

売りポジションは必ず証拠金がかかる、という考えは誤りです。

デビットスプレッドは、オプションの売りを保有していても証拠金が増えることはなく、証拠金所要額は0円です。

理由は損失が限定されているからです。

証拠金所要額が0円だから、証券会社独自の掛け目によらずにデビットスプレッドを組むのに必要な資金だけ用意すれば取引を行うことができます。

楽天証券のツールで証拠金所要額を調べると、8月24日に日経平均先物価格が22590円のとき、C22265を1枚買ってC22750を1枚売るデビットスプレッドは、「取引証拠金所要額」を見て分かるように証拠金所要額が0円です。

(引用:楽天証券の楽天マーケットスピード)

このようにデビットスプレッド取引には証拠金が掛かりません。

あなたもこの記事を読んで、なぜ損失限定のデビットスプレッドならオプション売りでも証拠金所要額が0円で取引できるのかを学んでください。

証拠金額とは最大ドローダウンの予測額

オプション取引の証拠金とは、持っているポジションの最大ドローダウンの額を証券会社が拘束する仕組みです。

例えば、コール売りポジションだけを保有した場合には、図のように損失が無限大です。

縦軸はオプション料を示していて、横軸は日経平均株価を示している損益グラフです。

コールを売った場合には日経平均株価が上昇すると右肩下がりのグラフとなっています。

この意味は、損失が限定されていないため日経平均株価が上昇すればするほど損失が膨らむことを示しています。

一方で利益は日経平均株価が下落した際に得られる水平線の値のみであり利益限定。

それがコール売りポジションです。

このような損失が限定されていないポジションにたいして、あらかじめ最大ドローダウンの額を証券会社が預かる仕組みが証拠金制度です。

したがってこのコール売りポジションには下記のような証拠金を必要とされます。

C22750を1枚売った時の証拠金所要額です。

取引証拠金所要額を見ると、725,800円必要と算出されています。

C22750は1枚170円であり、1枚売るために必要な証拠金はSPAN証拠金の555,800円、それにオプション売りで受け取ったオプション料の17万円を加えた額の725,800円を証拠金として口座に入れておかなければいけません。

証拠金は相場変動によって変化する

この証拠金所要額は相場変動によって変化します。

証拠金は最大ドローダウンを予測した額であり、相場によって最大ドローダウンの計算方法が異なるため、常に一定の額にならないからです。

同時期に別な条件で証拠金金額を算出することは困難なので、代わりに異なる権利行使価格のコールオプションの銘柄で証拠金を確認してみます。

この事例ではC22500を1枚売りました。

日経平均先物の価格が22,590円の時にC22500を売ったことを想定した証拠金シミュレーション結果を見ると、SPAN証拠金の額は614,100円です。

先ほどのC22750を売った時よりも要求されるSPAN証拠金所要額は増加しました。

さらにC22500はオプション料が310円なので、取引証拠金所要額は合計して942,100円です。

このようにオプション売りは証拠金が必要で、その額は一定ではありません。

だから資金に余裕をもって取引をしなければいけないので資金管理が大変です。

でも、この証拠金がかからない戦略があれば、資金管理を厳密にしなくても取引できるようになると思いませんか?

そのためには、最大損失額を限定するポジションにすることです。

デビットスプレッドなら、売りポジションが入っていても損失限定なので証拠金がかかりません。

デビットスプレッドが証拠金不要な理由は損失限定だから

デビットスプレッドとは、高いオプションを買って安いオプションを売る、スプレッド取引の一種です。

同じく楽天証券のマーケットスピードを使って、現在の日経平均株価が22590円としたときに、コールデビットスプレッドを組成したグラフが下図です。
C22500を買って、C22625を売ったコールデビットスプレッドです。

真ん中の水平線がデビットスプレッドの損益曲線です。

利益は限定されていますが、損失も限定されています。損失が限定されているので、最大ドローダウンを必要とすると証拠金も有限です。

このグラフは同じ日経平均株価に連動した同じ満期の2つのオプションを使っているので、損益を合算させることができますので、合成した線を描いて損益を知ることができます。

この合成された損益グラフが示しているのは、日経平均株価が何千円も上昇しても利益額は一定ですし、何千円という大暴落が起きても、損失は一定です。

例えばグラフに示されているように満期に日経平均株価が21,750円で終了した場合には最大損失の-60円、22,000円で終了した場合でも最大損失は-60円、22,500円で終了した場合でも-60円です。

このグラフにはありませんが仮に日経平均株価が2万円を割っても1万5000円を割っても、最大損失は-60円で収まります。

一方、日経平均が満期まで上昇して22,750円になった場合には最大利益は65円、23,000円になっても最大利益は65円、仮に相場が急騰して日経平均株価が3万円を超えたとしても、最大利益は65円のみです。

ポジションをそれぞれ分解すると、仮に日経平均株価が+1000円上昇した場合には、コール買いオプションが利益を1000円上昇分の利益が出る一方で、コール売りオプションが‐1000円分の損失を出すのですが、差し引き65円分必ず利益になって返ってくるので合算して考えることができます。

このようにデビットスプレッドは、買いポジションと売りポジションの損益を合計して計算できます。

デビットスプレッドを構成するそれぞれのポジションの損益グラフ

このデビットスプレッドは下記の2つの要素から成り立っています。

オプションの買いポジション:利益が無限大になる性質

オプションの売りポジション:損失が無限大

この2つのポジションを同時に保有すると、買いポジションの利益無限大の性質のおかげで、売りポジションの損失無限大がカバーされます。

デビットスプレッドは最大損失額を支払い済み

このデビットスプレッドの最大損失額は60円です。

この額は、デビットスプレッドを建てる時にすでに証券会社に支払っている額です。

最初にC22500を230円で買い、C22625を170円で売っているので、60円分を証券会社に支払っています。

よって、投資家はデビットスプレッドを組成するために支払った額以上の損失を被ることはありません。

オプションの売りポジションを持って損失無限大だととしても、オプションの買いポジションがその損失分をすべて補っているからです。

オプションの価格構造上、支払額が最大損失となる戦略が、デビットスプレッドと呼ばれます。

デビットスプレッドの「デビット」とは、デビットカードに代表されるように「支払い」という意味があり、最初にデビット=支払いを済ませるので、最大損失は有限で最初の支払額のみです。

このような損失限定の仕組みを構築できるのがデビットスプレッドです。

SPAN証拠金制度でポジションの損益を相殺する証券会社なら、必要資金は最初の投下資金に限定されますので証券会社の証拠金掛け目に左右されることなく、どの証券会社を利用しても一定額で投資できます。

証券会社ごとに設定している証拠金掛け目は、所要証拠金に対して1倍とか1.2倍とか1.6倍などと独自の計算を用いますが、この値は証拠金所要額が発生した場合の計算です。

デビットスプレッドの場合は取引証拠金所要額は0円なので掛け目とは関係がありません。

証拠金のシミュレーション方法

楽天証券のツールを使って、証拠金の計算をしてみましょう。同時期のC22625を買ってC22750を売るコールデビットスプレッドを想定します。

まず買いオプションを入力します。

証拠金シミュレーション画面で、オプション銘柄を選定し、権利行使価格と取引タイプ、枚数を記入します。


実際の取引の際には、買いオプション料(この画面で表示されているネットオプション価値の総額230,000円)以上は口座に資金が必要です。

次に、売りオプションだけ入力してみます。

前述したように、売りオプション単体で保有した場合には証拠金が発生します。

その金額はSPANパラメータ計算により決まります。

では、買いオプションと売りオプションを組み合わせた、デビットスプレッドを表示します。

このように、デビットスプレッドならSPAN証拠金所要額が59,800円と出ていますが、ネットオプション価値の総額(投下資金)は60,000円ありますので、取引証拠金所要額は0円です。

相場が変動してもこの値は変わりませんので、最初にオプションを買う際の自己資金を除けば、デビットスプレッド組成後は拘束される証拠金がありません。

デビットスプレッド組成のためには買いオプション料は必要

デビットスプレッド組成後は必要証拠金が支払額のみで良いので小資金でも戦えます。

しかし、デビットスプレッドを完成させるまでには買いオプションのコストは発生しますので注意しておきましょう。

最初にC22500を230円で買う資金量を確保しないと、肝心の買いポジションが持てないからです。

最初からデビットスプレッドの最大損失額の60円だけ保有して取引をしようとすると証拠金不足になります。

まとめとデビットスプレッドの稼ぎ方のコツ

オプション売りで証拠金を拘束されない取引を実現するには損失限定のポジションにすると証拠金拘束がありません。

そのためには損失限定ポジションにすることで実現します。

デビットスプレッドなら、最大損失が限定されているために最初の支払い金額以上の証拠金を要求されることはありません。

証拠金とは最悪シナリオが起きた際に支払い能力が担保されるようにあらかじめ証拠金に余裕を持たせておくための制度であり、デビットスプレッドなら最悪シナリオが起きても損失限定だから証拠金が増えることはありません。

デビットスプレッドを組む際には、買うときには資金が必要になりますが、売りポジションを追加すれば買いコストの大半が戻ってくるので、組んだ後はその差額の支払い(デビット)の分だけを証券会社に支払うだけでポジションを保有できます。

この証拠金がかからないデビットスプレッドは、ポジションの作り方を工夫すると、期待値をプラスにすることができます。

例えば今回の事例のように60円(6万円)の投資をすると、平均のリターンが70円(7万円)にすることも可能です。

期待値プラスのデビットスプレッドを組めるようになれば、相場の変動に翻弄されることなく常に淡々とデビットスプレッドを組めるようになれるので、そのデビットスプレッドのコツをメルマガで公開しています。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

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