株オプションは現物株の売買の一つの方法

投稿者名:守屋 史章

この記事では、個別株オプションの学び方についてお伝えします。

【まとめ】

株オプション取引は現物株の売買の一つの方法(売買予約・手付けのようなもの)です。

 

株オプションは何か特別な取引なのではなく現物株の売買の一つの方法です(売買予約・手付けのようなもの)。

デリバティブという言葉を聞くと、どんなイメージが湧いてきますか?
先物、オプション、CFD・・・など、現物株とは異なる、派生的な金融商品といったイメージでしょうか。

このようなイメージをもってしまうと、オプションは、怖いもの、危険なもの、よくわからないもの、というところが先にたってしまい、そこから先に進めなくなってしまいます。

そこで、オプション取引が私たちの普通の経済活動・経済行動において特別なものである、という概念をまずは振り払っていただければと思います。決して人間が儲けるために作り出した怖いもの、人間が作り出した金融の世界で生み出された「とんでもないもの」、というものではありません。もともとは私たちの経済活動の中で必要があって生まれたもの、身近にもあるものだということを知っていただくために、コールオプションの起源としてタレスの話が有名なので、まずこちらをご紹介します。
※以下のタレスのお話は、板谷敏彦「金融の世界史」(新潮選書)p44等を参考に、学習目的のために筆者が脚色をしています。

タレスは古代ギリシャの哲学者でしたが、あまり裕福な生活を送ってはいなかったそうです。あるとき彼は、ちょっと意地悪な人から、「哲学者はお金を稼ぐことができず、貧しいじゃないか」と言われたそうです。
そこでタレスはその気になればお金持ちになれる、ということを証明するため、天文学の知見に基づいて翌年のオリーブの豊作を予測しました。

お金を儲けるのには需要が高まるものを手にする必要があります。

豊作になったオリーブを持っていても安くしか売れないので、オリーブを栽培するということは考えませんでした。
儲けるには、必要なもの、足りないものを持っている必要があると考えて、彼は、オリーブの搾油機に目をつけます。哲学者でも儲けようと思えばできることを証明するだけですから、搾油機を買い占めるのもその後に困りますし、何より買い占めるほどの資産がなかったはずです。

そこで、搾油機を借りる約束(予約)をしておくことにしました。今すぐに借りると賃料は1年分払わないといけないので、今はまだ借りないが、後日借りたいときに貸してもらえるよう予約金だけ先に払っておき優先的に借りられるようにしておきました(不動産等で用いられるいわゆる手付け金のようなイメージ)。

例えば100円で借りることのできる権利を30円で押さえておこう(買っておこう)といった感じです(予約権/手付け)。
町にあるすべての搾油機を100円で優先的に借りることのできる権利を持ちました。
実際に豊作になったときには30円で買っていた予約権を行使して、賃借料100円を支払って搾油機を借ります(30円で借りられるわけではありません。予約権を行使すると、その後正式に賃貸借契約に進み、あらかじめ決めていた賃料を払って搾油機を借りるという流れになります。なお、この予約金30円を賃料の一部として充当する場合は手付けの色が濃くなりますね。資料によれば手付け的だったのではないかとされています。なお、この予約金はあくまで予約料なのであって、賃料は別途払う必要があるという契約であれば現代のオプションに近づきます)。

実際タレスの予想通りオリーブは豊作でした。オリーブ農家の人々は搾油機を借りなくては仕事になりません。しかし市場には借りられる搾油機はもうありません。すべてタレスが借りているのですから。こうなるとオリーブ農家の人々はタレスの言い値で借りるほかありません。そこでタレスは、(例えば)通常の借り賃の2倍の200円で貸すことで70円の利益を得た、というお話なのですね(ストーリーや金額等、筆者が学習目的のために脚色しています)。

賃料が上がることを見越して搾油機自体を先に借りておくのではなく、借りることのできる権利だけを押さえておくという作戦です。このような、後で要求すれば優先的に借りる(買う)ことができる権利のように、相手方対して、およそ物を引き渡せ、という要求・行為・権利は金融の世界では「コール」とよばれているわけですが、その権利条項(オプション)のこと、あるいはそのような条項のついた契約(取引)のこと、またはその権利自体をコールオプションとよんでいます。この古代ギリシャのタレスの搾油機に関する取引は、上記定義に当てはめれば、コールオプションだということになるわけです。

ちなみに、搾油機を貸す側の人は、このコールオプションをタレスに設定した(売った)ことになります。豊作の場合でも、タレスとの約束の賃料(=通常の賃料)を得られるにとどまりますが(契約内容にによっては予約金の分、通常の賃料よりもプラス)、不作で借り手がつかない場合でも、タレスから受け取っていた予約金(手付金)は自分のものになりますので、経営が安定することになります。

不動産の売買や賃貸借契約の手付金も似たような仕組みで、いくらかお金(手付金)を払っておいて、買うことのできる権利・借りることのできる権利を押さえておけば、優先的に不動産を買う・借りることができますね。これもコールオプションの一種といえましょう。

タレスの例は、まだ金融商品などなかった時代のものであり、また、手付の例も、私たちの社会生活で普通に行われている経済行動です。何も、特殊で怖い取引というわけではありません。

 

コールオプションは株を買う予約・手付け

さて、先のタレスの事例や手付けのお話と同様、経済取引の一つにすぎない株式の売買においても、今はまだ買わないで、買う予約だけしておく、という取引の必要性は十分に考えられるでしょう。

例えば今すぐにある株を買いたいがお金が足りないというとき、お金を貯めてからその株を買うのではチャンスをのがしてしまいかねないので、ひとまず今は株を買う予約をしておいてお金が貯まったところで株にしよう、というニーズもあるかもしれません。あるいは、とある会社の株が上がると信じてはいるが、大きく下がるかもしれないと少々不安なとき、実際にその株を買うのではなく、ひとまず買う権利を買っておき、上がったことを確認して、買う権利を行使して当該株を買う、といったことを考える人もいらっしゃるかもしれません。

かくして、今、株式の売買契約を行うのではなく、株式を買いたければ買える権利(予約権)を付与してもらう契約(コールオプション契約)を結んでおき(当然タダというわけではなく、いくらかのお金を支払う必要があります=お金を払って権利を取得するので、コールオプションを「買う」と表現するのです)、必要ならばその権利を行使して決められた価格で株を購入できるような制度ができあがりました。

コールオプションの面白いところは、コールオプションが「権利」と構成されているので、自分が思ったように株価が上昇しない場合は、権利を行使しなくてよいというところです(権利は放棄できます)。「やっぱ買うのやーめた!」といえるのです。

プットオプションは株を買い取ってもらうためのもの(株の買取保証制度)

一方でプットオプションは、株を持っている人が使う権利です。
先ほどのコールオプションは株を持っていない人が、これから株を買うイメージで考えましたが、今度のプットオプションは株を持っている人が株を手放す(売却する)イメージです。

例えば老後資産として何とか1,000万円は用意したが、これでは足りないし、インフレで実質的に目減りする可能性もあることから、何かしら運用しなければならないということで、株に投資して配当金をもらい、その配当金を年金の不足分にあてて老後を過ごそうという作戦を考えた方がいらっしゃったとしましょう。

とはいえ、老後資産です。大きく棄損させるわけにはいきません。株式は何とかショックなどで大きく下げることもあり、その後、回復するにしても時間がかかりますから怖いですね。

こんなとき、1,000万円で買った株式が大暴落して市場では半値になっても、例えば投下資金の90%、900万円で買い取ってもらえる(売却できる)ような制度があればどうでしょうか。

実は、これこそがプットオプションなのです。

プットオプションは、株価が値下がりしても約束の価格で買い取ってもらえるという条項・権利なのです(=ものを手放す、押し付ける、相手に引き取らせることを「プット」とよぶところからきているとされます)。

もちろんこんな素晴らしい権利ですから、ただで手に入るわけではありません。いくらかの保証料を支払う必要があります。
それでも、その保証料を払うことで資産を守れるならば、これはよいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このように今から株を買おうと思っている人が手付として株を予約しておくのがコールオプション、株を持っている人が下がったときに下がる前の価格で引き取ってもらえる(売却できる)ように買取保証しておくのがプットオプションなのです。

動画で解説もしていますのでこちらをご覧ください。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

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※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

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