みなさんこんにちは!オプショントレード普及協会の守屋です。
オプショントレード普及協会の金森です。
それでは今回から、オプションはおろか、投資についてほとんど知識のない大学生であるうどん君に守屋先生からコールオプションやその考え方を伝えていく、という講義を始めさせていただきたいと思います。
よろしくお願いします!
お願いします!
※このコンテンツは大学生でもわかるコンセプトとして教育目的で話をしており、学生にオプション取引を勧めるものではありません。
コールオプションの起源、タレスの話
それでは早速コールオプションについての解説に入っていきましょう。
コールオプションの紹介ではタレスの話が有名ですので、そちらの方を守屋先生よりご紹介いただきたいと思います。
はい、今金森さんがおっしゃった通りですね、タレスの話というのはコールオプションというものを語る上で非常にわかりやすい逸話ということでよく使われます。
ところで、うどん君は「タレス」のこと知ってます?
ハイ。高校生のときに授業でやりましたね。
そうですよね、じゃあ彼は「万物の根源」は何と考えた人だったっけ?
「万物の根源は水である」でしたよね。高校生の時は「水はタレス(垂れる)」みたいにだじゃれ風に覚えたんですけど、それ以外はあんまり印象にないですね、、、。
まぁ、そうだよね。
ただですね、今回オプションの話ということになってくると、実はオプションというものを最初に経済活動に用いた人物として語られることが多いんですね。
えっ、オプションってそんなに昔からあるものなんですか?
実はそうなんですよ。彼の話はずっと後に生まれたアリストテレスの著書の「政治学」の中で紹介されたものなんですね。
ということは、「オプション取引が紀元前からあった」ということになるんですよね。
てっきりオプションはつい最近できたものだと思ってました。
実際、投資について僕はほとんど知らないんですけど、なんとなくオプションというものは「投資の最先端をゆくシステム」みたいなものではないかと思ってました笑。
守屋先生:確かに、「オプション」って聞くと「金融工学」「デリバティブ」とかそんな言葉でよく言われるんだけれども、普通の生活をしていたら馴染みがないかもしれないよね。
でも、「タレス」は実際この「オプション」を使ったんですよ。
だから、実際は何も「特殊なもの」じゃないし、人間の経済活動をやっていたら、自然に必要になって、使われたものなのかもしれないんだよね。
タレスが経済活動にオプションをどのように利用したのか
それではタレスが経済活動にオプションという概念をどのように利用したのでしょうか、引き続き守屋先生に解説していただこうと思います。
タレスは当時は貧しかったようなんですね。
哲学者と言ってもお金を稼げないと人々に批判されたそうです。
でも哲学者はお金を稼ぐことに興味がないだけで、稼ぐ能力がない訳ではなく、その気になれば稼ぐことはできる!ということを証明しました。
その話をしますね。
ところでうどん君、紀元前のギリシャの人たちはどんな商売、くらしをしていたのかな?
農業ですかね?
そうですね、まぁギリシャは農業といっても土地がそんなに豊かではなかったからオリーブの栽培が盛んにおこなわれていた、っていうのは今でもそうですよね。
で、彼はそのオリーブに目をつけてね、次の年の豊作を予測できたそうなんですよ。
問題はこの天文学の知識をどうやってお金に変えるか。
豊作は予測できたけれども彼は今お金がない訳でしょう?
じゃあどうやってお金に変えるか、お金儲けするんだろう?うどん君だったらどうする?
お金がないんですよね、お金がないから誰かを雇うってことはできないですし、土地を借りても意味がないですよね。
そうだね、うどん君の場合は今、オリーブを自分で作ることを考えたのかな?
豊作になるんだから、作ってみようというふうに思ったんだよね?
そうですね。
ただまぁ、当時の彼にはできなかったでしょうね当然。
実はそのオリーブっていうのはオリーブ自体というよりはそのオリーブの油ですよね、オリーブオイル。
これは、当時ワインや金、高価な家畜などと並ぶすごい価値のあるものとして取り扱われていたそうです。
ただ、オリーブオイルを手にするためにはいわゆる搾油機と呼ばれるオリーブを圧搾する機械が必要で、当時の農家の人たちはそれを持っている人から借りるのが普通だったという状況がありました。
じゃあそれを先に借りといて農家の人に又貸しすれば良いのかな?
でも使わない今の時期に借りても賃料がすごくかかって結果的にあんまりお金儲けできないかもしれないですね。
そうだね、搾油機を今のうちから借りといて、あるいは買ってそれを農家の人に貸そうという作戦。
しかしながら、買ったりするのにも借りておくのにもお金がかかるから利益が上げられないなと思ったんだよね。
そうですね。
タレスが用いた「手付け」
そうなんですよ、でタレスは何を考えたかっていうと「手付け」という概念を使ったんですよ。
「手付け」って今もありますが、うどん君は知ってる?
はい。部屋を借りたりするときになんか聞いた覚えがありますね。
実際部屋を探しに行ったときに不動産屋さんに行ったとして、仮にいい部屋が見つかってもパッと見て「ココ借りますっ!」ってなります?
イヤ、ならないですね、他に良い部屋がないか探しますね。
実際探しに行って良い部屋に出会うこともありますが、まだ他にあるかもしれないというときがありませんか?
ありますね。
良い物件を見つけたと思ったけど他の物件も見てみたい、でも他の物件をみてる間に良いなと思っていた物件が他の人に借りられたらどうです?イヤじゃない?
そうですね。
ということは、今のちょっと良いなと思った物件をとりあえずキープしておきたくないですか?
良い部屋を見つけたと思ってもすぐには入居するかは決められないですし、キープしたいですね。
その時に不動産屋さんに「キープしておいて」と口頭で言っても、不動産屋さんも商売なんだから
「じゃあわかりましたキープしときますよ、あなたのために」
というようなことはしないわけよね。
やっぱり次に、「借りたい」という人がいたら貸したい訳ですよ。
で、「それをなんとかキープしてください!」っていう制度が「手付け」だよね。
お金をいくらか払ってその部屋を押さえておくということをします。
これがタレスが使った手なんですよ。
オリーブの搾油機を持っている人のところに行って、今は借りなくてもキープしておく、だから予約だよね。
予約って言っても手付金を渡して「借りる権利」を得た、というようなイメージかな。
まぁ、確かにそうすれば搾油機を普通に借りるより安く搾油機を押さえておけますね。
ですよね、今からずっと借りていたら借り賃がすごいかかるからね。
だから、今借りるんじゃなくてとりあえず手付けを打っておく。
借りる権利が「コールオプション」
借りる権利を押さえておく。
これがまさに「コールオプション」と呼ばれるものなんですね。
そうなんですね。
このコールってまぁ単語の意味っていうか語感というかね「人を呼ぶ」というようなイメージがありますよね。
人を呼ぶっていうことはこちらに呼んでくるこっちにもってこい、っていうイメージかなぁ。
物をこっちに持ってくるイメージ。
だから実際はこの金融の世界で「コール」というと「買う」という意味の言葉だったり「買い戻す」というような、そういった意味を持つ言葉なんです。
そうなんですね。
なんか「コールオプション」とかって聞くとその「コール」って言葉自体が聞いたことないような特別な意味があるのでは、と思っていたんですけど意外とシンプルな由来なんですね。
そうだね、ホントに「呼ぶ」って言葉に近くて、こっちに持ってこーいって感じだね。
さて、タレスの話に戻りますが、タレスはその地域にあったすべての搾油機を借り締めました。
だから、およそすべての搾油機賃貸業者のところに行ってすべての搾油機の手付けを打っておいた訳だ。そうするとどうなりますか?
当然、オリーブオイルが欲しかったらタレスに貸してもらうしかなくなりますよね。
まぁ、そうだよね。貸す人が自分しかいなければ自分の言い値で貸せるよね。
ということで、彼は「手付金」という実際に買ったりする訳でもない、借りる訳でもない、借りたものを押さえておくための小さな「手付金」というお金で実際に利益を上げて、当時の哲学者にはお金稼ぎができないという揶揄に対して、見事に反証して見せたわけです。
タレスがどうやって利益をあげたのか
それでは次に実際にそれぞれに価格を設定してどのようにして貧乏ながらタレスが利益を上げたのかを考えてみましょう。
今回の設定では搾油機の価格を10000円、搾油機の賃料を100円、「借りるための権利」いわゆる搾油機の「手付金」を30円として考え、搾油機の賃料については月毎に賃料100円がかかる。
また、タレスが農家に対して搾油機を貸す時の賃料は200円とします。
さらにタレスはこの地域のすべての搾油機を借りると仮定します。
うどん君、価格設定をみてどんなことを考える?タレスがどうしたかってことをちょっと想像してみて。
うーん、やっぱり搾油機の価格がかなり高いので、お金がないはずのタレスには購入はできないと思いますね。
うん、そうだね。まぁ、買うという選択肢はなさそうだね。
じゃあ、豊作になることがわかっているから今のうちに借りとこうという作戦、これはどうなる?
えーっと、たしかタレスは次の年の豊作を予測できたということだったはずなので、例えばそれがわかったのが12月だったとしても次の年の大体9月か10月あたりがたしかオリーブの収穫時期なので1000円位はかかる計算ですよね。
そうだね、10ヶ月間ずっと借りておくとなるとまぁ1000円位かかりそうだね。
じゃあその間ずっと借りる作戦もやめたほうがいいよね。
そこで手付なんだけど、農家に貸した場合はどうなるかな?
えっと、まずは30円を搾油機を持っている人にまず払って借りる予約をして、収穫の時期に搾油機を元々持っている人に対して100円のお金を払って、また、農家の人に貸し出す時には200円で貸すので一回70円の利益ですかね。
そうだね、実際この話では手付けで全ての搾油機を押さえておきました。
200円というのは例えの価格なので、この金額はもっと高くなると思うけどね。
最初位借りた100円よりも高い値段で人に貸せた、転貸したから70円の利益を得られたとこういう訳なんです。
オリーブが取れなかった場合の損失も少なくなる
全部結構な痛手ですよね。
買っちゃった場合はもう10,000円スッポリなくなっちゃって、すぐに借りた場合でも1,000円位は失うっていう計算になりますよね。
そうだね、1,000円で借りておいても結局使い道がなかったら借り賃の1,000円はパーだね。
買っていた場合はどこかに売れば少しは回収できるかもしれないけど、そもそも買うお金が無かったようね。ただスタートお金がなかったから、これはナイよな。
でも、手付けを払った場合であれば、手付けは放棄できるんだよね。
放棄するということはこの30円で終わり、というわけですごいメリットだよね。
それに加えて今度は逆の側に立ってみようこの「手付金」をもらう側、もともと搾油機を持っていた人、彼らにとってはなんか良いことありそうだよね。
確かに普段だったら搾油機が使われない時期に早めに収入をもらえるってことですよね。
そうだね、貸してないのに30円もらえるんだもんね、で実際貸す時には100円で貸せる訳だから、いいよね。
もちろんタレスにその手付けをもらってなければ、当時みんなが欲しがっていた搾油機をもっと高い値段で貸せたかもしれないけれど、それはわからないもんね、天文学の知識を持たない彼らにとっては。
なので、この作戦というのは搾油機を貸すレンタル業者にとっても普通の賃料100円はちゃんともらえて、それ以外にもこの30円の手付金ももらえるメリットもあるわけです。
実際は「政治学」のテーマでは「独占すること」が財の獲得に繋がるんだよという話の中で出てきます。
でも金融の側にいる人達はこのタレスの手付けの仕組みを現代のオプションの概念の説明に使って、オプションの魅力、オプションが決して特殊じゃないことと、低リスクで大きな利益を得たというふうな例えとして使うんですね。
おわりに
はい、それでは今回はオプションの概念をわかりやすく伝える逸話として、タレスの話を守屋先生にしていただきました。
うどん君は理解できましたでしょうか?
はい、そうですね。
オプションって最初聞くと、かなり難しいものだと思っていたんですけど、人間の営みの中で自然にできたもので、すごく特別な、金融とかに携わっている専門家みたいな人にしかわからないようなもの、とかでは決してないということがわかりましたね。
理解してくれたようでとても嬉しいです。