プット売りは損失無限大だと思われる2つの理由

投稿者名:金森 雅人

プット売りは損失無限大なので危険。

プット売りは損失が限定されていないので、初心者が手を出してはいけない危険な取引と思われがちです。

しかし、このプット売りは損失無限大ではなく損失限定だということをご存知でしょうか?

もし日経225オプションで10円のプレミアムが付いたプット16000を売った場合には、1枚あたりの最大損失額は1,599万円です。

無限大ではなく、1,599万円で損失限定になります。

ではなぜオプションの教科書や解説書には「プット売りは損失無限大」と書かれているのか?

その理由は2つあります。

1つ目はたいていの個人投資家の自己資金額が、最大損失額に対して全く足りていない点です。

特に日経225オプション市場では起こりがちです。

そして2つ目は自己資金が足りていないのにも関わらずプット売りができるから、ついつい目先の利益欲しさに売り枚数を増やしてしまう点です。

この記事ではなぜプット売りは損失限定なのに「損失無限大」と言われる理由を解説したうえで、それでも安全にプット売りを行いた人のために2つの方策を提示します。

この記事を読めばあなたもプット売りを安全に出来る方法を身に付けることができるでしょう。

【もくじ】

1.P16000のプット売りの最大損失額が1,599万円になる理由

2.プット売りが損失無限大と言われる理由は売る枚数

3.解決策はフルキャッシュを確保しておくこと

4.それでもプットを売たい人への2つの選択肢

5.まとめ

 

1.P16000のプット売りの最大損失額が1,599万円になる理由

なぜプット売りの最大損失額を計算できるのか。

その理由は日経225オプションのプットを1枚売って日経平均が大暴落したときの計算をすれば一目瞭然です。

P16000を10円で売ったとします。この際の最大損失額はプット買いで株価下落時に123万円の利益を出した損失限定戦略で解説した式を用いると

損失額=(SQ値-権利行使価格)円×1000倍

であり、プット売りの損益は 受取額 + 受け取りプレミアム で計算されます。

この式に従って計算すれば、最大損失額が計算できます。

もしSQが16,000円なら、(16,000-16,000+10)=10円の利益となりますのでプット売りで受け取った10円が利益として確定します。

もしSQが15,000円なら、(15,000-16,000+10)=990円の損失となります。

もしSQが14,000円なら、(14,000-16,000+10)=1,990円の損失となります。

もしSQが13,000円なら、(13,000-16,000+10)=2,990円の損失となります。

このようにSQ値が低くなればなるほど損失額は増えていきます。

SQ値はオプションの満期日の日経平均株価なので、底値はいくらになるでしょうか?

株は最も安い株価は無価値になる0円です。だから最も低くてもSQ値は0円までに限定されています。ということは、もしSQ値が0円なら、最大損失は(0-16,000+10)=15,990円となります。

これ以上日経平均株価は下がる余地がありませんので、この損失は増えることはなく、損失限定です。

オプションの実際の取引価格は表示価格を1000倍しますので、プット16000を10円で売った場合には、最大損失額は15,990円×1000倍=1,599万円に限定されるのです。

よってオプションの売りは損失無限大ではなく、損失が限定されている事が分かりました。

2.プット売りが損失無限大と言われる理由は売る枚数

ではなぜ損失無限大と言われるのでしょうか?その理由は、枚数を大量に売るからです。

1枚当たりのプレミアムが安ければ安いほど、利益を増やすためには大量に売らないと回収できないという心理が働きます。

わずか1円のプレミアムのオプションでも、100枚売り込めば100円になり、手元には×1000倍の10万円が入ってきますので、枚数を増やして売ってしまうのです。

さらには、ほぼ9割方利益になる勝率の高さから、先月は大丈夫だったから今月も大丈夫だろうと根拠のない自信を持ってしまいがちになります。

そして脇が甘くなり、コツコツ利益を積み上げたものをドカンと吐き出してしまいます。

ですので、損失無限大というのは比喩的な例えであり、いくら枚数を増やしても1,599万円×枚数分しか最大損失額は増えません。

だからプット売りとは本来は損失無限大ではなく、日経平均が0円になった時が最大損失額となる損失限定ポジションになります。

今回の事例のようにプット16000を100枚売った場合は、約16億円が最大損失であり、損失限定です。

しかし、オプションを売る人は1枚当たりの最大損失額の1,600万円を用意している人は少ないのが現状であり、たいていの投資家の資金許容量としてプット1枚当たり1,600万円保有していないことを前提に、「損失無限大(に思えるくらいに最大損失が膨らむ)」という表現になるのです。

プット16000を100枚売るのに16億円用意している投資家は、個人投資家の許容リスクを遥かに超えているのではないでしょうか。

売り枚数を増やすことが可能となる証拠金取引

このようにオプションを売る人が最大損失額を用意していない理由は、証拠金取引でわずかな証拠金を確保しておけば売ることができてしまう点にあります。

実際の証拠金は1枚当たり1600万円も要求されませんので、枚数を売ることは可能です。

しかし、売れる枚数と、売っても安全な枚数は違います。

株を買う投資は投下資金以上の資金を失うことはありませんが、オプション売りの場合は投下資金に限定されません。

売っても安全な枚数を超えた取引をして、その損失額が準備している資金量より遥か大きな額になるので、例えとして「損失無限大」と言われています。

ではどのような心理で個人投資家はプット売りの枚数を増やしてしまうのか?

この記事のこれまでの内容を知れば、プット売りの枚数を増やす危険なことはしないと思うでしょうが、実際には過去に個人投資家が大量にプット売りをしていました。

その投資家心理と取引事例、そして損失額の実情をこの動画では解説しています。

この動画では、勝率の高さに目がくらんで安易にポジションを取った損失事例を紹介しています。

2011年1月は20万円の利益、2011年2月も20万円の利益と、順調に毎月20万円の利益が出る戦い方をオプションの売りで実現出来ていました。

このように高い勝率と順調な利益をコツコツ積み上げていくと、聖杯のような投資方法だと感じてオプションの売り枚数を増やしてしまう人が出てきます。

しかし、3月11日の東日本大震災以降の場面では、大きな損失を被っています。

これまでの毎月20万円の利益を軽く吹き飛ばすように、3月15日には最大で2,900万円の損失となっているのがこの動画のシーンから分かります。

もし3月の荒れ相場をやり過ごして4月までこのポジションを維持していたら、この月もプラス20万円の利益が出ていたので、なんとかこの荒波をやり過ごせれば、この2011年3月も利益になっていたはずです。

ですが実際には最大損失が2,900万円に膨らむ前に、怖くなって損切りをするか証拠金が足りなくなって強制的に決済させられてしまうのは明らかです。

これまで解説してきたように、プット16000の最大損失額は1枚あたり1,599万円になりますので、もし今の相場でプット16000を100枚売ったら、最大損失は15億9,900万円となります。

最大損失額が約16億になる可能性があるオプション売りを、資金が100万円単位や1,000万円に満たない人がこの投資を行えば、損失は無限大のように膨らむ可能性があります。

だから無限大の損失と言って注意を喚起しているのです。

3.解決策はフルキャッシュを確保しておくこと

しかし、このような危険に見えるオプション売りでも、安全にオプション売りを行うことで毎月20万円のプレミアムを得る方法があります。

それはフルキャッシュを用意することです。

フルキャッシュを用意してオプションを売ることで、損失無限大ではなくなります。

先ほどの事例のように100枚売り込んでいる人がフルキャッシュとしてどの程度資金を確保すればいいのか。

それは最大損失額の分です。

つまり約16億を用意しておけば、プット売りでも最大損失額が自己資金の範囲内で収まります。

オプションの世界で言われる「損失無限大」は、自己資金に対して最大損失額が大きすぎることを指しています。

だから、個人投資家としてできることは、フルキャッシュを用意して損失を自己資金以上に膨らませないことです。

日経平均株価が0円になっても耐えられる自己資金を用意すれば、安全にオプションを売りを実行してプレミアムを得る事も可能となります。

プット1枚当たり1600万円分を口座に保有した状態であれば、プットを1枚売っても証拠金が不足することはありませんので安全と言えますし、もし100枚売りたいから場合には16億円を用意しておけば、動画のように最大含み損が2,900万円になっても安心してプット売りをし続けられるでしょう。

通常の相場なら売れる枚数分を売りたくなるのがプット売りですが、日経平均が大暴落することを考えると、安全なのはフルキャッシュを確保してから売ることです。

ここでの安全とは「損失にならない」ではなく、「破綻や追証にならない」という意味での安全です。

プット売りが危険と言われるのは、このような最大損失額を把握せずに、自己資金を全額用意していない状況で、プットを売ろうと思うから危険なのです。

4.それでもプットを売たい人への2つの選択肢

とてもじゃないけど1枚当たり1600万円も用意できないけど、どうにかしてプット売りしたい場合は、2つの選択肢があります。

逃げられるスキルを養うためにギリシャ文字を学ぶ

相場が変動した時にその変動を察知して逃げるスキルを養っておけば、そのスキルによって破たんを免れるかもしれません。

どのくらいの変動が来たら、オプションプレミアムはどうなるのかあらかじめ予想できるように知識をつけておくことも重要です。

その知識があれば日経平均がいくらまで下落したらオプションプレミアムはどの程度上がるのか、さらには日経平均がどの程度下落したらオプションプレミアムのインプライドボラティリティがどのように上昇するのかがわかるようになります。

そうすれば事前に対処し始めるための限界ラインを決める事が出来るし、もし有事が起きた際には速やかに逃げる対処が取れます。

このスキルを身に付けるために必要なのがギリシャ文字の理解です。

ギリシャ文字を理解すればもし万が一が起きても対処できる方法を身に付けることができるし、万が一が起きる前にあらかじめ予測したい場合に備えて検証する事が出来ます。

逆に言うと、ギリシャ文字の理解無しでは安全なプット売りはできません。

もしそのような知識が無くてもプット売りで利益を上げたいという場合には、やはりフルキャッシュを用意しておく必要があります。

自己資金が少なくて済む市場でプット売りを行う

もしギリシャ文字の理解をせずにプット売りをしたい、でも自己資金を多く確保できない場合には、市場を変えてプット売りをする方法があります。

日経225オプションで自己資金が1600万円必要なのは、日経平均株価が2万円を超えていて、日経225オプションの倍率が1000倍あるからです。

もし株価が1/10程度であり、倍率も1/10程度の市場があれば、自己資金は1/100の16万円程度で取引する事が可能になりますよね。

日経225オプションではそのような戦い方を実現することは不可能ですが、投資対象を日経225オプションから他の市場に目を向ければ、そのような市場はあります。

それが銀オプションです。

銀はだいたい1600円(16ドル近辺)の時価総額で、最低取引単位が100倍となっているので、日経225オプションの1/100程度の資金、16万円程度あればフルキャッシュが実現します。

この銀オプションのプットを売れば、フルキャッシュを用意して安全なプット売りを実現できます。

5.まとめ

プット売りは損失限定です。

損失額=(SQ値-権利行使価格)円×1000倍で最大損失がきまるので、プット16000を売って日経平均株価が0円になれば、約1600万円の損失になります。

それでも損失無限大と言われるのは、投資家がフルキャッシュを用意していないからになります。

そしてフルキャッシュを用意しなくてもプット売りが出来てしまう証拠金取引の特徴があります。

フルキャッシュを用意している投資家に対してはプット売りは損失限定となります。

よって安全にプット売りをするにはフルキャッシュを用意してプットを売るか、または有事の際に対処できるようにギリシャ文字でオプションプレミアムの変動を予測するスキルを身に付けることです。

もし日経225オプションでフルキャッシュ用意できない場合には、約1/100も自己資金が小さく始められる商品として銀オプションを取引対象として検討してみるとよいでしょう。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

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