最近、米国株オプションという言葉をよく耳にするようになったと思いませんか?
巷では2023年がオプション元年で、さまざまな証券会社が参入するのではないかと噂されるほどです。
初心者がオプションという言葉を知ったきっかけは、証券会社の広告や新聞などから情報を得ることが多く、たいていは日経225オプションをまず最初に勉強してみようと考える方がたくさんいます。
「オプション取引」という言葉を使うときは、ほとんどが日本で一番メジャーな日経225オプションを指しています。
ですが、最近米国株取引を扱う証券会社が増えてきており、それに合わせて米国株オプションの人気も高まってきました。
しかし米国株オプションについて制度や仕組みを解説しているサイトはまだまだ少ないです。
そこで今回の記事では、米国株オプションの制度や仕組みについてを説明するとともに、日経225オプションとの違いを整理しました。
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米国株式オプションの制度
米国市場のオプションの制度をまとめました。
取引時間
夏時間は22:30~翌5:00まで、冬時間23:30~翌6:00となります。
(夏時間:3月第2日曜日~11月第1日曜日)
権利行使のタイミング
権利行使に関しては米国の株式オプションはアメリカンタイプと言い、いつでも権利行使可能なタイプであり、アウトオブザマネーでも権利行使可能です。
オプションの売り玉を持っている場合は、いつでも権利行使をされる(割当といいます)可能性がありますが、オプションを売っている場合に、権利行使される前に市場でオプションを反対売買することも可能です。
一方で日経225オプション(指数オプションは)原則としてヨーロピアンタイプを採用しており、ヨーロピアンタイプの権利行使は満期にのみ行われます。
株式オプションの倍率
株式オプション1枚あたり株式100株相当です。
満期
株式オプションのMonthlyものは第3金曜日の引けで、Weeklyものは毎週金曜日の引けに設定されます。
人気があるETF(S&P500に連動するSPYなど)のオプションは月曜日~金曜日毎日満期が設定されています。
なお、満期まで9か月以上ある銘柄をLEAPS(Long-term Equity Anticipation Securitiesの頭文字を取ったもの)と呼び、9月に3年先の1月第3週満期ものが設定されます。
権利行使価格
銘柄によりますが、一般的には0.5~1ポイント幅から設定され、値がさ株は2.5幅~5ポイント幅となります。
呼び値
銘柄によりますが、一般的には3ドルまでは0.01刻みで、3ドルを超えると0.05刻みになります。
流動性の高いETFは0.01刻みで設定されることもあります。
決済方法
a.期中反対売買
b.満期前権利行使(割当)による株の売買(指数の場合は現金決済)
c.満期自動権利行使(割当)による株の売買(指数の場合は現金決済)
d.満期権利消滅
米国株オプションを扱う証券会社
日本国内の証券会社で米国株オプションを扱っている企業はサクソバンク証券とIB証券(インタラクティブブローカーズ証券)です。
IB証券は国内口座でオプションができるようになりました。
ただし現在はキャッシュ口座のみで、取れる戦略はカバードコールなど限られたポジションのみです。(2023年6月現在)
米国株オプションと日本の日経225オプションの比較
2023年5月29日に東京証券取引所で日経225ミニオプションが上場されたことで、日経225オプションで扱うサイズが米国株オプションに近づきました。
ここでは米国株オプションの中でも最も流動性が高いSPYと、日経225オプション(ミニオプション)の仕様について比較します。
SPY (S&P500連動型ETF) | 日経225オプション &ミニオプション | |
---|---|---|
原資産 | S&P500 | 日経平均株価 |
種類 | 株式オプション | 指数オプション |
決済方法 | アメリカンタイプ | ヨーロピアンタイプ |
現在の株価 | 約420ドル | 約33,000円 |
オプションの倍数 | 100倍 | 1,000倍 (ミニは100倍) |
1枚当たりのサイズ (時価総額) | 42,000ドル(5,880,000円) (1ドル140円換算) | 33,000,000円 (ミニは3,300,000円) |
流動性 | 毎日でも1年先~2年先も充分な流動性 | 主に第1限月がメイン |
取引時間帯 | 夏:日本時間22:30~5:00 冬:日本時間23:30~6:00 | 日中8:45~15:15 ナイトセッション16:30~翌朝6:00 |
取引期間 | 毎日満期があり、短期売買から 年単位の長期運用まで可能 | 満期までの時間が少なく 短期売買中心(数日~数週間) |
最終取引日 | Monthly物は第3金曜日引け Weekly物は金曜日の引け | Monthly物は第2金曜日(SQ)の 前日大引けまで |
グリークスの知識 | グリークス不要なポジションも可能 | 期中取引をする場合は必須 |
権利行使 | いつでも可能 権利行使すると株式の売買行為が発生 | 満期まで権利行使されない 満期時に差金決済 |
資金量の目安 (コール買い) | 8月11日満期のATMコールオプションは 6.55ドル×100倍×140円=91,700円 | 8月10日満期のATMコールオプションは 610円×1000倍=610,000円 (ミニの場合は61,000円) |
取扱い証券会社 | サクソバンク証券、IB証券、ウィブル証券 | SBI証券、楽天証券、マネックス証券 松井証券、auカブコム証券 他 |
注目のトピックス
ここでは米国株オプションと日経225オプションを比較した表の中で、より詳細なポイントをお伝えします。
日本のミニオプションができたことで、エントリー時に要する資金が少なくなり、参入する敷居がかなり下がりました。
これまで日経225のオプションは1,000倍で取引するため、例えば日経平均株価が33,000円だとすれば、3,300万円相当の時価総額のものを扱っています。
ところがミニは100倍ですから330万円相当の時価総額の扱いに変わりました。
これによりSPYオプション1枚よりも時価総額が下がりました。
これまでは3,000万円超えるような取引サイズを証拠金取引によってレバレッジを掛けていましたが、今回ミニオプション登場によりポジションサイズが小さくなり、個人投資家にとっても扱いやすい規模になったと言えます。
ただし資金量については、ある程度の安定運用を狙うポジションを組もうとした場合は、時価総額にもよりますが米国株オプションの方が比較的低い金額で始められます。
例えばカバードコールを例にすると、米国株オプションでコカ・コーラ株のカバードコールをした場合は資金が6,000ドル(約80万円)あれば実行できますが、日経225オプションの場合はミニオプションでレバレッジを掛けなかったとしても330万円程度の資金が必要です。
安全に取引するためにレバレッジを掛けないとすると、時価総額が低い銘柄がある米国株オプションの方が小さな価格から始められます。
日経225ミニオプションの登場で必要な時価総額は下がりましたが、証拠金取引をする上では気を付けなければいけない点はあります。
330万円相当の時価総額のものを、アウトオブザマネーの遠いオプションを使ってわずか数千円で取引したら、やはり用意した証拠金を超えるような損失が出る可能性は十分にあります。
逆にオプションを安い値段で買っておくということもでき、数千円で数百万円相当の取引ができる可能性もあります。
これをいわゆるレバレッジといいます。
株オプションの場合は、株になることを前提としており、時価総額分のお金はしっかりと用意してやることが多いです。
この場合はレバレッジは1倍です。
株オプションは株を売ったり買ったりするのと同じ行為をオプション使ってやるというだけであり、株式投資とあまりリスクは変わりません。
日経225のミニオプションも330万円を用意して取引すれば、例えばプットを売ったとしても、用意した330万円を全部失ないますがそれ以上にマイナスになることはないためレバレッジ1倍の戦い方と言えます。
もしあなたが「レバレッジを掛けて少ない資金で稼ぎたい!」と思うなら、日経225オプション市場がその願いにぴったりだと思います。
日経225オプションは取引金額の1,000倍であり非常に高いレバレッジが効きます。
日経平均株価が33,000円の場合は時価総額でその1,000倍の3,300万円を扱っているのに、必要な証拠金はわずか140万円ほどで取引ができるからです。
日経225ミニオプションが登場し100倍サイズになったため、330万円ほどの時価総額となりましたが、証拠金も同じように下がるため、従前と変わらずレバレッジを掛けた取引が可能です。
日経225オプションは攻める投資家にとってはこれほど魅力的な市場はないかもしれませんが、初心者にはレバレッジを掛けない取引をお勧めします。
レバレッジを掛けない米国株オプションは年利10%を目指すのに対して、日経225オプションは相場観やテクニックを生かして月利10%をどうやって稼ぐかを考えるイメージです。
日経225オプションなら上がっても下がっても横ばいでも利益を出せるチャンスがあり、しかもレバレッジかけて、短期で資金効率が良い取引ができます。
日経225オプションと米国株オプションは「流動性」が異なります。
日経225オプションは直近限月は流動性がありますが、2か月先や半年、1年先はほとんど取引できません。
それに対して米国株オプション市場は、直近限月はもちろんのこと1年先やなんと2年先まで充分に取引されていて流動性があるため、短期投資から長期投資まで幅広く取引できます。
225オプションは1か月先までのオプション取引が活発で、短期トレードになりがちです。
短期の株価の上昇下落に引っ張られてしまいトレーディング要素が強く現れます。
日本にも個別株式オプションはあります。しかし今はまだ流動性に乏しいです。
先に米国で学んでおいて、来るべき日本の株オプション時代に備えておく意味でも米国株オプションは向いているかもしれません。
米国株オプションの場合は、1年先や2年先のオプションを使ってじっくり投資することができます。
それに対して、日経225オプションの場合は、特にミニはWeeklyオプションとして1週間で勝負が決まるものもあり、ラージサイズの日経225オプションもほとんどが1ヶ月以内に勝負が決まるオプションが活発に取引されています。
短期的な上げ下げを利益に変えるのは、ランダム性が勝敗を分けるため非常に難しく、相場感や読みが非常に重要になってきます。
また、オプションを使うのは上がるか下がるかではなくて、一定のレンジに収まるか収まらないかという戦い方もできますが、これも結局はこの期間にあるレンジに収まるか収まらないかの予想となり、実は簡単ではありません。
それに対して、株オプションであれば、その株が上がるだろうと思って、 じっくり構えて1年ぐらいかけてゆったりと利益を取りに行くということも可能です。
株式投資の延長線としてバイアンドホールド型の取引ができ、実質的に短期で勝負せざるを得ない日経225オプションやミニオプションに比べると、株オプションの方は株式投資に近い使い方がでます。
日経225オプションで出てくるグリークスは、期中で取引する際にリスクをコントロールするために必要です。
本来、期中のオプション価格の変動を利益に変える場合には、グリークスを見ないとわかりません。
一方で株オプションを使い、年単位でじっくり腰据えていく戦略の場合は、株式と同じような取り組みをしてグリークスを必要としない戦い方もできます。
米国株オプションは満期を過ぎたら必ず株の売買になり、満期取引を基本とした戦略も組むことができます。
もし株オプションも満期まで持たずに期中取引をしたり、期中取引が基本である日経225オプションを手掛ける場合にはグリークス勉強が必須となります。
日中取引ができて相場状況が手に取るようにわかる場合については、市況の情報の得やすさで日経225オプションを選ぶ方もいます。
日本は日中取引できるのに対して、米国は22:30-5:00と昼夜逆転してしまうため、活動時間帯に取引できるのは日経225オプションの方でしょう。
日経225オプションの場合は、日中の活動時間帯でありすぐに対処できる環境を利用して、レバレッジを掛けて隙を突くような取引をすることが可能です。
一方で米国株オプションの場合は、デイトレードでは日本時間の夜中起きていることになり現実的ではないため、必然的にオーバーナイトしても想定以上の損失を被らないような戦略を選んだり、対策を講じておく必要があります。
満期自動権利行使・割当=インザマネー(満期にオプションの本質的価値が残っている)場合は自動権利行使・割当が行われます。
※但しinが0.01ドル未満(ギリギリin)の場合は意思表示または権利行使が必要
OCC(クリアリング機関)によるランダムな割当手続きがされますが、権利行使や割当は即時に反映されるものではなく、手続きを経てデリバリーが行われます。
オプションの売り手は土曜日の朝(取引時間終了後)すぐに株の割り当てがあったかどうか証券口座からでは分かりません。
口座に反映されるまでに相当の時間がかかります。
コール売り玉が権利行使を受けた場合には、株式のショートポジションになります。
株のショートが維持できない証券会社の場合は、株のショートポジションは翌マーケットオープン後に強制的に決済されることになります。
その結果、コールスプレッドにおいては、オプションの買い玉だけが残ることになります。
プットの売り玉が権利行使を受けた場合は株式を購入することになります。
購入するための資金が足りない場合は、権利行使を受ける可能性が高まってきて、必要証拠金が増加、不足する場合には強制的に決済されます。
プットスプレッドを組んでいる場合、オプションの買い玉だけが残ることになります。
満期までに早期権利行使をされない場合は、満期において自動権利行使・自動割当が行われます。
例えばコールスデビットスプレッドにおいて、満期にオプションの買い玉だけがインザマネー(株価が権利行使価格を上回っている状態)の場合は、自動権利行使により株を購入することになります。
株の購入代金が足りない場合は、満期直前に強制決済されることになります。
また、株を取得することになった場合は、株価の下落により、当初支払った金額を超えて損失が出る可能性があります。
プットデビットスプレッドにおいてプットオプションの買い玉だけがインザマネーの場合には、自動権利行使により株のショートポジションになります。
空売りはできないため翌取引日に株式については強制決済されることになりますが、それまでに急騰した場合に、当初支払った金額を超えて損失が出る可能性があります。
自動権利行使・割当の結果、株式のロングポジションと株式のショートポジションがそれぞれ一旦建って、そのあとに相殺される形になります。よってポジションはすべてなくなります。
初心者は何から始めればよいか
自分が買ってもいいなと思う株であれば、とりあえずコールオプションを買って予約し、買う権利だけ抑えておくという戦い方もできます。
また、株を買うつもりでプットを売って、プレミアムをもらったうえで、株に変われば株を保有して、株にならなければそのプレミアムだけもらうという作戦もあります。
ターゲットバイイングなら持ってもいいと思う株のオプションを、株式投資の延長としてうまく利用することを試すのも有効です。
日経225ミニオプションであれば、まずは買いから入った方がよいでしょう。
練習して感覚を掴むためです。
短期的な上昇や下落を先物やETFで利益に変える場合は、逆に行った時の損切りを設定しなければいけなく、意外とその損切りにすぐかかってしまい、なかなか難しいものがあります。
これから先に先高感があるのであればコールオプションを買って、最悪その投資した金額を失うだけという投資スタイルも取れます。
あるいは、今は株価が高く、ここから1回落ちるところをプットオプションを買って取りに行くという形で相場の方向性の勝負をコール買いやプット買いで体験してみるには、ミニオプションは非常にやりやすいでしょう。
方向性を当てるのは難しいですが、タイミングを捉えて、期中での戦いを練習することも有効です。
まとめ
日経225オプションと株オプションの違いについて対談をしています。
こちらをご覧ください。
オプションを初めて取引しようとする方の指針となれば幸いです。
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